上写真=加藤陸次樹は表彰式で厳しい表情に。大逆転負けの悔しさがにじむ(写真◎小山真司)
■2022年10月22日 ルヴァンカップ決勝(国立/39,608人)
C大阪 1-2 広島
得点者:(C)加藤陸次樹
(広)ピエロス・ソティリウ2
「見返したい強い気持ちがありました」
試合を終えて表彰式を待つ間、加藤陸次樹は小さく微笑みながらサンフレッチェ広島の選手たちと抱擁を交わして、ライバルの初優勝を称えた。しかし、表彰式では再び虚ろな表情になった。自らのゴールでタイトルを目前にしながら、アディショナルタイムに2失点を喫する大逆転負け。昨年に続いて、ルヴァンカップ決勝の場で夢が手からすり抜けた。
「悔しい、しか出てこないです」
試合直後だから当然の感情だ。
「広島を相手にできることをやって、素晴らしい試合内容だったと振り返っても思います。でも結果として、同じような負け方をしてしまったので何も言えません。まだ整理がついていないですし、悔しさしか残っていない」
広島とは今季4度目の対戦だが、これで全敗、しかも、J1のアウェーゲーム、天皇杯準々決勝、そして今回と3試合が逆転負けだ。
それでも、その広島から奪ったゴールの話になると、生気を取り戻す。
その瞬間は落ち着いていた。53分、広島の佐々木翔に上門知樹が寄せてコースを限定し、GK大迫敬介へのバックパスを選択させた。それを狙っていた。先に動き出してかっさらい、右にかわして無人のゴールへと蹴り込んだ。
「佐々木選手が後ろを向いた瞬間にバックパスすることは予測していたので、狙い通りでした。ボールが弱かったのもあるけれど」
ともに攻めにリズムを作れない前半を0-0で終え、後半に入って間もない先制ゴール。一気に流れを引き寄せたかった。
「ずっと広島を相手に決めたかったし、見返したい強い気持ちがありました。決めた瞬間はすごくうれしかった」
思わぬ形で奪ったリードを、あとはどう有効に生かして試合を進めればいいか、だった。加藤は足を痛めて70分に担架で運ばれ、そのままピッチを去って、あとは仲間に託した。
ところが、79分にマテイ・ヨニッチの手がナッシム・ベン・カリファの顔に当たって退場処分、風雲急を告げた。すると、90+6分に広島のCKで鳥海晃司の手にボールが当たったとしてVARチェックののちに主審がオンフィールドレビューで広島にPKを与えて1点を奪われると、90+11分にはまたもCKから最後はピエロス・ソティリウに蹴り込まれて大逆転弾を浴びる。
「このゴールで勝たせたかったけれど、勝たなければ意味がない」
加藤はそうつぶやいた。2年連続で王冠に手を伸ばしながら、あとほんの少しのところで触れることができなかった。悔しい。だが、来年にもう一度、チャレンジしてみせる。
取材◎平澤大輔 写真◎小山真司