上写真=毎熊晟矢(16)と為田大貴(19)が松田陸(2)とともにゴールを祝福。両サイドの推進力が効いた(写真◎J.LEAGUE)
■2022年9月25日 ルヴァンカップ準決勝第2戦(埼玉/26,899人)
浦和 0-4 C大阪
得点者:(C)オウンゴール、奥埜博亮、加藤陸次樹、ジェアン・パトリッキ
※1勝1分けでC大阪が決勝進出
「一人ひとりの良さをみんなで引き出し合いながら」
浦和レッズとのホームゲームを1-1で終えた準決勝第1戦を踏まえて、セレッソ大阪の小菊昭雄監督は第2戦の前に「選手の立ち位置を微調整した」と明かしていた。
「(リーグ戦とルヴァン杯の)ここまで3試合は相手の良さを消すサッカーでした。しかし今回は勝たなければ決勝に進めないので、アグレッシブに自分たちのサッカーを出していきます」
その小菊監督の覚悟に、選手たちも応えた。中でも右サイドの毎熊晟矢、左サイドの為田大貴という推進力と粘りが自慢のアタッカーがのびのびプレーできたことが、浦和を圧倒した大きな要因だろう。毎熊は浦和対策を明かす。
「今回は完全に4-3-3で整理してやろうと入った試合でした。おっくん(奥埜博亮)との距離も近いし、(松田)陸くんと3人でローテーションしながらいい距離感でプレーできて、1点目もおっくんとの距離が近かったからスペースに相手が食いついたと思います」
守備では4-4-2の3ラインをコンパクトに保ち、ボール保持のステータスに入ると、中盤は鈴木徳真をアンカーにして右は奥埜が前に出て、左は上門知樹が最前線から少し下がる形でインサイドハーフになった。両サイドハーフの毎熊と為田がはより高い位置に出てウイングとなって、中央に加藤陸次樹が立つ。
23分の先制点はオウンゴールだったが、毎熊が言う「いい距離感」が生み出したものだ。右サイドで受けた毎熊が一度中に戻し、奥埜がターンしてさらに中央へ、この間に毎熊が右サイドを駆け抜けていて、鈴木はワンタッチでスルーパス、毎熊が中に折り返したボールが浦和の左サイドバックの明本考浩の足に当たってゴールに飛び込んだ。
左サイドでは為田が躍動した。「高い位置でサイドバックを引き出す、という決まり事があったので、チームのやり方としてうまくいったかなと思います」と話した狙いが結実したのが、30分の2点目だ。左サイドで山中亮輔が持つと、内側にいた為田が浦和の右サイドバック、関根貴大の背後のスペースにランをかけ、縦パスを受けるとセンタリング、これを奥埜が決めてみせた。
前半の2つのゴールはともに、浦和のサイドバックを引き出して裏を突く、という共通のメカニズムによって生まれた。
「やり方はチームとしてはっきりさせていましたし、練習からどういう戦術でどう戦うのかは全員が理解した上で臨んでいたので、何も迷うことはありませんでした。先制点は取れましたけど、相手に先制された場合のシチュエーションも想定できていたので、90分を通して勝てる試合展開に持ち込む自信はありました」
準備への信頼を語ったのは、為田だ。毎熊も自分自身の好調をチームに還元できていることを実感している。
「ここ数カ月はいろいろ考えながらプレーして悩んでいたけど、がむしゃらにやらなければと整理できました。自分は自分のスタイルでやっていきたい」
そうやって、それぞれが自分の最大の特長を認識すれば、あとは組み合わせるだけ。その自信は、為田の言葉に詰まっている。
「だいたいこの位置でこの選手が持ったらこういうパスが来るな、とか、この選手が持ったらこういうところに立っていてほしいだろうな、というのはわかっていますし、いまチーム全体でみんながそれを把握しながらプレーしています。一人ひとりの良さをみんなで引き出し合いながらプレーできているのが好調の理由だと思います」
わかり合い、助け合う。戦術的な仕掛けが功を奏したのはもちろんだが、そのことこそがC大阪の最大の強みだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE