セレッソ大阪が浦和レッズを4-0で下したJリーグYBCルヴァンカップ準決勝第2戦。この結果、C大阪が決勝進出を果たした。浦和に対して積極的にボールを奪いに出る作戦が功を奏したが、奥埜博亮が決めたチップキックゴールへの一連の流れは、その象徴だった。

上写真=奥埜博亮が決めた30分の2点目が、C大阪に大きな勢いをもたらした(写真◎J.LEAGUE)

■2022年9月25日 ルヴァンカップ準決勝第2戦(埼玉/26,899人)
浦和 0-4 C大阪
得点者:(C)オウンゴール、奥埜博亮、加藤陸次樹、ジェアン・パトリッキ
※1勝1分けでC大阪が決勝進出

「ハイプレス&4-3-3」のコンボ

 瞬時にテクニカルなチップキックを選んだのは、「それしかなかった」からだとは!

 セレッソ大阪が浦和レッズからもぎ取った4-0の完勝は、2点目が大きな意味を持っていたのではないだろうか。第1戦を1-1で終え、アウェーゴールを奪われたC大阪は、この第2戦ではゴールを奪わなければ即、敗退となる。

 23分に先制したのはオウンゴールによるもので、やや幸運もあって(誘発した毎熊晟矢も「自分で決めたかった」と本音も)、さらに勢いづかせるためにはもう1点がほしいところだった。それを、奥埜博亮が決めてみせたのだ。

 30分、左サイドを破った為田大貴の折り返しに、加藤陸次樹がスルーして、その背後から奥埜が入っていく。

「クロスが入ったタイミングでゴール前に入ろうと思っていて、遅れ気味になりましたけど、タメ(為田)からいいボールが来て陸次樹もスルーしてくれました。まずは自分の前が空いたのでファーストタッチでしっかり止めることを意識して、気持ち、長くなったかと思いましたけど、キーパーが出てきたタイミングで浮かすしか選択肢がありませんでした。だから、僕の中では悩まずに打てたんです」

 可能性が限定されたからこそ、その一瞬に神経を研ぎ澄ませ、左足で軽く浮かせて流し込むことができたというわけだ。加藤の気の利いたスルーも相手を惑わせたが、奥埜から要求したものではなかったのだという。

「声はかけていなかったんですけど、陸次樹も誰かいるだろうと思ってスルーしたと思います。ゴール前に人がいるからこそつながったゴールだと思うので、続けていきたい」

 声すらいらないコンビネーション。そして、そこに人がいる、ということが、このゴールの最大のポイントだった。守備では4-4-2の3ラインでハイプレスを仕掛け、ボール保持の局面になると、中盤の底を鈴木徳真に任せて前線に近づくポジションを取った。4-3-3の立ち位置へと変化したのは、絶対に必要なゴールを奪うための仕掛けだった。

「今日は攻撃のときには、一つ高い位置を取らせてもらえたので、チャンスがあればゴール前に入っていこうと思っていました。いい守備ができていたからこそ攻撃もいい距離感でできていて、最後にタイミング良く中に入っていけてよかったです」

 つまり、小菊監督が選手に施した「ハイプレス&4-3-3」によって、守備から攻撃へとスムーズに移行してゴール前に人数をかけることができて、その一人である奥埜が実際に決めてみせた、ということになる。浦和対策のために仕込んだメカニズムの象徴的なゴールだったのだ。

 こうして前半を2-0で折り返すと、前がかりになる浦和の裏を突いて後半にも2点を追加し、終わってみれば圧勝だった。「自分たちのやりたいような、いままでやってきたアグレッシブなサッカーを出せた試合だったかなと思います」の言葉を、充実の表情とともに口にした。

 さあ、ついに決勝だ。昨年は名古屋グランパスに敗れてタイトルを逃した。小菊監督が「忘れ物を取りに戻る」と宣言した通りに、再びファイナルの舞台に立つ権利を得た。相手はサンフレッチェ広島。今季はリーグと天皇杯で対戦して、3度すべて敗れた相手。

「また決勝で戦えるチャンスを与えられて、相手が広島ということもありますけど、自分たちがしっかりしたサッカーをして、去年の決勝で負けた悔しさもありますし、積み上げてきたものを決勝の舞台で出したいと思います」

 前回の決勝で奥埜は先発出場、0-1の75分までプレーしたが、そのあとにさらに1点を許して0-2で敗れている。昨年逃したタイトル獲得と今季全敗の広島への勝利という「ダブルリベンジ」を果たしてみせる。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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