9月7日に湘南ベルマーレを一蹴して、暫定ながら首位に返り咲いた横浜F・マリノス。豪雨の中でも確かな技術とコンビネーションで上回ったが、3-0の勝利の仕上げをしたのは、ヤン・マテウス。8月に加わってこの日がデビューだったブラジル人アタッカーが、いきなりゴールを決めてみせたのだ。

上写真=ヤン・マテウスが日本のデビューを自らのゴールで祝った(写真◎J.LEAGUE)

■2022年9月7日 J1リーグ第25節(日産ス/11,388人)
横浜FM 3-0 湘南
得点者:(横)西村拓真、アンデルソン・ロペス、ヤン・マテウス

止まるテクニック

「サッカー選手であればみんな、デビュー戦でゴールを決めることは夢だと思います。点を取ることができてうれしいし、首位に立てたことが素晴らしかった」

 孝行息子の華麗なお披露目だ。横浜F・マリノスの背番号20、ヤン・マテウスがデビュー戦初ゴールである。

 この夏にポルトガルのモレイレンセから加わって、この日に初めてベンチ入り、63分にエウベルに代わってピッチに飛び出して、日本でのキャリアをスタートさせた。独特のリズムを刻むドリブルで惑わしたと思ったら、今度は球離れ早く預けてからゴール近くやサイドのスペースに潜り込んでみたりと、横浜FMの攻撃的なスタイルにまた新たな色を加えた。

 ハイライトはもちろん、ゴールシーンだ。

 89分、左の小池龍太からのパスをボックス近くで受けた仲川輝人がカットイン、シュートフェイントで相手の重心を傾けてから、右横に優しく預けた。そこに、ヤン・マテウスがいた。

「左から攻撃が始まって、テル(仲川)が切り込んできたときに、テルの視野に入ろうと少し止まりました」

 右寄りから中央に入ってくるアクションの中で、そのまま動き続けるのではなく、止まることで自分の存在を認識させるテクニック。

「それでテルが見てくれて、いいボールを出してくれました。うまくミートできて、いいコースに入ってよかったです」

 左足のインフロントあたりでボールを引っかけるようにワンタッチですくい上げ、GK谷晃生の頭上を抜いてゴール右に送り込んだ。試合後には、サポーターが集まるゴール裏へ。

「幸せな気持ちでいっぱいでしたし、ファン・サポーターのみなさんからの愛情をもらっているので、得点で貢献できて彼らの前で喜びを爆発させたかったんです」

 直立不動ではきはきと答える姿と言葉からは、実直なキャラクターがにじみ出る。

「右ウイングでプレーすることのほうが多いんですけど、左ウイングでもトップ下でもプレー経験はあります。僕がどのポジションでよりチームに貢献できるかは監督が見てくれるので、監督が選んだところが僕のベストポジションだと思います」

 この日は左ウイングとしてプレーしながら、ゴールシーンの直前に仲川が負傷で一度ピッチの外に出たこともあって入れ替わる形で右に回って、最後は中央でフィニッシュ。その流動性は横浜FMのスタイルにベストマッチする。

「来日する前からJリーグを見ていて、質の高いリーグだと思っていましたし、実際にプレーしてもレベルが高かった。そしてこのチームにはクオリティーの高さがあって、今日はデビュー戦でしたけれど、順応していけばもっと良いパフォーマンスを見せられると思います。マリノスのサッカーは楽しかったし、もっともっとプレーしたい」

 優勝に向けて、また新しいパワーが加わった。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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