明治安田生命J1リーグ第27節で、鹿島アントラーズは川崎フロンターレに敗れることになった。しかし、2点を失ったあとの猛攻は迫力満点。岩政大樹監督は「常勝チーム」であることをいったん忘れて、新しい歴史を作る決意を試合前に選手に語りかけていた。

上写真=仲間隼斗は優勝へと戦い続けることを誓った(写真◎J.LEAGUE)

■2022年8月27日 J1リーグ第27節(等々力/20,757人)
川崎F 2-1 鹿島
得点者:(川)家長昭博、脇坂泰斗
    (鹿)仲間隼斗

「相手を圧倒していた」とピトゥカ

 王者・川崎フロンターレを追い込んだ。だが、上回れなかった。鹿島アントラーズにとっては、いわば「勝利のような敗戦」だったかもしれない。

 岩政大樹監督が就任してから3試合目が、川崎Fとのアウェーゲーム。8分と14分に失点するやっかいなスタートだったが、足を止めずに戦い続けて、54分には仲間隼斗が1点を返す。そこからさらに反撃のパワーが増して、最後は攻撃自慢の川崎Fに5バックの策を採らせるほどに追い込んだ。しかし、もう1点が生まれなかった。

 岩政大樹監督の第一声は「選手は申し分のない90分を戦いました。負けたのは僕の責任。それだけです」。早口でまくし立てた。

 試合前には「常勝の看板をおろしていい」と選手に語りかけたという。

「ミスも負けも出てくるけれど、それは自分が引き受けるので、どんなスコアでもどんな状況でも、続けることを求めました。本当に素晴らしかった」

 アルトゥール・カイキをFWで起用し、中盤をダイヤモンド型に配して仲間がトップ下、右に樋口雄太、左に和泉竜司を置いて、センターはディエゴ・ピトゥカに任せた。ピトゥカは4分に決められたPKを献上したり、中盤でプレスの餌食になる場面もあったが、岩政監督は「ミスはあってもとがめることはしないし、ボールを持って運んでいくことで相手が困っていた場面はたくさんあった。申し分なかった」と称えた。

「総合的に見て、相手を圧倒していた」というのが、ピトゥカのピッチの上での実感だ。

「川崎との差はないと思う。今日もほとんどが私たちのゲームだったし、岩政監督になってから変わってきた。自分もPKを与えてしまったけれど、ビッグクラブとしての姿勢や振る舞いを見せることができた」

 負けは受け入れるとしても、チームとしての姿勢には胸を張った。

 54分の追撃の1ゴールは、仲間のヘッドで生まれた。左から樋口雄太が送ったクロスに対して、ジェジエウの一歩前に出て頭でこするようにボールに触ってコースを変えた。

「今日はどんな状況であろうと、90分間、自分たちのプレーを出すようにと岩政監督に言われていました。それを徹底できて、自分たちの色を示せたと思います」

 負けはしたものの、手応えは十分だった。岩政監督の「常勝の看板をおろしていい」という言葉は「選手を楽にしようとして言ってくれたと思う」と受け止めている。

「いまから岩政監督とともに、いまいる選手で新しいものを作り上げていくということで、常勝というよりは、これからチャレンジしていくチームだと思っています」

 その最初の一歩が、この「勝利のような敗戦」だ。

「優勝の望みはまだ絶たれたわけではないので、可能な限りあきらめずに目指して、できることを徹底してやっていきたい」

 優勝を追い求める真っ直ぐな視線と「立ち向かう勇気は90分、出せたと思います」という自信が、新しい鹿島の行方を示している。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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