上写真=鬼木達監督はルヴァン杯敗退にも「一切忘れてネガティブ感はいらない」と切り替える(写真◎J.LEAGUE)
「かなりの時間でいい動かし方も」
「あまりそこに逃げたくない思いはあります」
ルヴァンカップ準々決勝第2戦でセレッソ大阪にアディショナルタイムに同点ゴールを許し、アウェーゴールの差で敗れる衝撃的な敗退劇。鬼木達監督はそれを、コロナ禍によるコンディション不良に求めようとは思わなかった。
「スコアではしっかりしたリードを保っていましたし、あの時間帯は相手は本来ならボールが取れなかったり、奪えてもすぐに取り返されてしまうことを一番嫌がる時間です。でも、自分たちから得点へのエネルギーを渡してしまった。そこがもったいない」
ボールをみすみす失うことで、自分たちでコントロールできたのにできなかった、という悔恨だ。だが、中2日ですぐに次の試合がやってくる。可能性のある最後のタイトルであるJ1は、第25節で京都サンガF.C.をホームに迎える。
「結果がついてこなかったのは、自分たちがもっとやらなければいけないから。そこは変わらず、京都戦は大会がまた変わるので一切忘れてネガティブ感はいらないと思います。ここからは本当に自分たち次第。どれだけ頭の中を揃えていけるかです」
だから、反省するのはもちろん、短い時間で京都戦の準備に没頭するためには、よかったことにも目を向けていくべきだ。例えば、C大阪から奪った先制ゴール。
40分にジェジエウ、山根視来と右でつないでから家長昭博が中央で受け、右に短く渡すと、橘田健人がペナルティーエリア中央のチャナティップに鋭敏なパスを突き立てた。チャナティップは左足でワンタッチで右へ。レアンドロ・ダミアンのシュートをDFが弾いたが、これをマルシーニョが蹴り込んだ。相手を見て、味方を見て、複数の選手が絡みながら相手の嫌がる中央の狭いエリアを突き崩して決め切った。
「狙い通りで素晴らしい得点でした」と鬼木監督も称賛する。
「ボールをしっかり動かしたところから、チャナティップのところに差し込んで、なおかつワンタッチでダミアンへと相手を見て出していたし、最後はこぼれ球にしっかり詰めていきました」
今季途中には、相手の怖がるところを崩せない時間が続いて、鬼木監督も強気で狙っていくようにと修正を施していた。それが表現できた。
「結果がすべての世界なので敗退は残念ですが、かなりの時間でいい動かし方もできていたし、2点目もカウンター気味ですが、最終的には慌てずに相手を見ながら、ダミアンとマルシーニョの2人のコンビネーションで決めています。ポジティブな材料が増えています」
敗退が悲劇的だからといって、光まで手放すことはない。「あとはリーグの方にどれだけすべてのカップ戦の悔しい思いをぶつけるか」と、残る最後のタイトル、J1リーグにすべてをかける。
だから、次の京都戦が特別な意味を持つ。台風も接近して、外的要因も戦いを難しくする。
「簡単ではないと思っていますが、本当にタイトルを取りたかったらやっぱりいまなんだ、ということを感じなければいけないし、感じられると思います。そのパワーは、疲れとかそういうことを関係なくしてしまいます。それが、自分たちがこれまで勝って経験を積んできたものです。すべてを経験に頼って勝てるほど甘くはないけれど、ありきたりでも覚悟という話を選手たちにしています」
さあ、勝負の90分がやってくる。