古今東西のサッカーの話題を取り上げ、対話形式で議論を深める企画を今回からスタートする。第1回はアルベル監督を迎え、昨年までのカウンター主体のスタイルから一変したFC東京の戦いぶりについて考えてみたい。改革元年、彼らが直面しているのは想定内の現実であり、『生みの苦しみ』なのか。あるいは理想へ固執するがゆえの結果なのか。サッカージャーナリストの北條聡氏に現状について聞いた。

上写真=ディエゴ・オリヴェイラに指示を送るアルベル監督(写真◎J.LEAGUE)

聞き手◎佐藤 景

幅を取るのはウイングか、SBか?

ーーFC東京はアルベル監督を迎え、今年は改革元年としてこれまでとは違うサッカーに取り組んでいます。ここまでの戦いぶりをどう見ていますか。

北條 率直に言えば、波がありますよね。その理由を一つ挙げるなら、メンバーがある程度、固定されてしまっていることがあると思います。その良い面、悪い面が出ている印象ですね。

ーー最初は最適解を得るために、選手を試している印象もありましたが。

北條 それがずっと続いているように映ります。軸は変えないけれど、連戦や誰かがケガした際には当然メンバーを変えなければいけない。それがうまくいっていないことで波も起こる。今の選手の使い方を見てみると、しっくりいかない中で、常時ベストを探している段階だと感じます。例えば渡邊凌磨は右サイドバックをやって右のウイングをやって右のインサイドハーフもやって、トップ下をやったりしています。渡邊の能力を評価しているのはよく分かりますけどね。

ーー渡邊の万能性で急場をしのいできたと言えなくもないですね。

北條 今シーズンはJ2のチームも含めて4-3-3を採用しているチームがたくさんありますよね。それ自体はいいけれど、サイドバックにいわゆる偽サイドバックのような選手をコンバートして置いても、そもそもチームがそれを活用するためにデザインされていないケースが散見しています。そういう疑問を感じるチームが少なからずある。

ーーすでに序盤の形から変化を加えたチームもありますね。つまりは4-3-3を運用できずにテコ入れした。

北條 機能しない結果、フォーメーションを変えたり、人を替えたりしているチームは確かにあって、ただそれは当然の判断とも言えます。FC東京も4ー3ー3を採用しているけれど、最初はなかなかうまくいかず、渡邊を色んなポジションに置いて最適解を探していた。ただ選手の配置を含め、どの形がいいのかを探る中で、ケガ人が相次ぎ、予定通りに事は進まなかったと言えると思います。それが、6月末から7月にかけてのFC東京の状態だったと思う。

ーー4-3-3を生かし切れていないと。この形ではサイドバックの振る舞いも大きなポイントになると思いますが、その点は?

北條 サイドバックについて言えば、『誰が幅を取るのか』問題が大きいのではないかと。

ーーウイングが幅を取るのか、サイドバックが取るのか、ですね。FC東京は小川諒也が移籍し、中村帆高が負傷離脱するなど、このポジションのやりくりに苦労した時期がありました。

北條 そもそも日本には、いわゆるウイングタイプが少ないと思います。内側に入ってきてプレーするタイプの方が多いですよね。だからサイドバックは基本、外回りになる。それはそれでいいのですが、形を優先して決して適材とは言えない選手に、サイドバックとして内側での仕事を求めるケースがある。無理に内側でプレーをさせようとして失敗してしまうというか。FC東京の場合も偽サイドバックに適性のある選手がいるかどうかを考える必要があると思います。ウイングがハーフスペースに入ってきて仕事をするなら、サイドバックは幅を取る仕事をすればいい。監督がその点をどう考えているのか、知りたいところです。

ーーレアンドロや渡邊がウイングを務めるなら、サイドバックは幅を取る方がいいですよね。ケガ人などの問題もありますが、今は開幕当初のように渡邊が右サイドバックを務めるケースは減りました。最初は内側で仕事するサイドバックを想定していたと思われます。

北條 そうでしょうね。渡邊なら問題なく偽サイドバックもできると思うけれど、サイドバックとしては守備面で苦労するところもあったでしょう。やっぱり前のポジションで使われる方が、彼の才能が生きると思いますし。

ーーサイドバックを誰が務め、どう振舞うのか。その点が整理されてくると、FC東京の波も小さくなると言えますか。

北條 それは一つあるでしょうね。あとはビルドアップのところをどうするのか。とくにその点がシーズン前半はFC東京はあまり明確ではなかったので。


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