川崎フロンターレに移籍して2年目となる塚川孝輝。高い守備力でアンカーやセンターバックを務めることが多いが、左サイドバックでもすでに3試合プレーしている。胸を張るのは、ゴール前に恐れずに飛び込んでいくダイナミズム。他の選手にはない魅力をチームに加えていく。

上写真=塚川孝輝は川崎Fで2年目。ケガもあったが、コンディションを上げてきている(写真◎J.LEAGUE)

「点と点で合わせればいい」

 塚川孝輝が成功と失敗の両方を味わった一瞬がある。

 6月25日の第18節ジュビロ磐田戦、71分からピッチへ入って間もない77分だ。右で崩しながら家長昭博が得意の左足の前にボールを置いて顔を上げた瞬間、塚川がペナルティーエリアの外から一気にスピードアップしてゴール前に入っていった。家長から最高の高さと速さのクロスが飛んできた。しかし、ヘディングシュートはバーの上へ。

「左サイドバックのポジションから飛び込んでいくのは有利になると思います。一度、アキさん(家長)のクロスに飛び込んだんですけど、相手が目に入ってちょっと引いてしまった部分があるので、しっかりダイナミックに入ればヘッドでたたけたと思います」

 左手を上げて要求しながら、思い切り飛び込んでいったところまでは良かったが、落下地点にはDFもカバーしてきていた。フィニッシュの瞬間に衝突の影響を和らげようと半身になったことで、ボールの芯をたたけなかった反省がある。

「試合が終わったあともそこは引っかかって、突っ込んでいけるのが自分の良さなので、気合を入れ直したいと思います」

 昨季、川崎Fに加わったが、J1ではまだ先発出場がない。この磐田戦も8試合ぶりの出場と久々。一時期、腰を痛めてチームから離れていた時期もあったといい、なかなか出番に恵まれなかったが、磐田戦に続いてセレッソ大阪戦もベンチ入りしていた。

 浦和レッズ戦、ガンバ大阪戦と同じように、磐田戦も左サイドバックとしての途中出場になった。センターバックやアンカーでプレーすることが多いが、「勝ち切るための戦術でのタスクが大きいと思う」と与えられた守備の役割をまっとうする。だが、磐田戦では投入後の85分に同点とされたことを悔やんだ。

「僕は強度を出したり前からボールを奪いにいく部分が強みなので、途中から出たら仲間の分も走らなければいけない」

 磐田戦ではそのとおりに走った。同点に追いつかれたのはCKからだったが、これは相手のシュートに全速力で戻ってスライディングでブロックした塚川の献身によって防ぐことができた。これでCKになったのだが、そうでなければ、そのままゴールを割られていたかもしれない。

 自ら振り返った家長からのクロスのシーンのほかにも、75分には左CKが逆サイドに流れたあとの家長のクロスに逆サイドから飛び込んでいったし、87分にも左の内側で受けてからペナルティーエリアのレアンドロ・ダミアンに差し込むと、そのままリターンをもらおうとボックス内に入っていった。本職ではないポジションでもしっかりとチャンスメークに絡んでいる。

「僕も思うことがありまして、中へ飛び込んでいく枚数が増えたり、もっとダイナミックさが出ればいいと思っているんです」

 塚川なら、その迫力をいまのチームに付け加えることができる。

「相手が待ち構えていても、勢いよく入ってくる選手は怖いと思うんです。そこに飛び込める自信はありますし、(トップにレアンドロ・)ダミアンや(小林)悠さんがいるところで、2列目から飛び込んでいけば相手は自分を見失いがちになります。ブロックを敷かれていても、点と点で合わせればいいですから」

 左サイドバックという慣れないポジションからでも、迫力満点でゴール前に飛び込むことはいくらでもできる。それはほかの左サイドバックの選手に比べて優位なところだし、もちろん、ほかにもプレーできるあらゆるポジションからでも。

「チームとして、目に見える結果が出てくれば成功体験になって、もっとそういう場面が増えると思いますし、いい流れになると思います。そこはみんな、同じ方向を向いています」

 守備の人というイメージが強い塚川だが、次のG大阪戦でピッチに立てば何度もゴール前に走り込む姿が見られそうだ。そしてもしかして、川崎Fの一員としてJ1で初めてのゴールも。


This article is a sponsored article by
''.