上写真=シュートの瞬間のユンカーの落ち着きは教科書のよう(写真◎J.LEAGUE)
■2022年5月18日 J1リーグ第11節(埼スタ/19,425人)
浦和 3-3 横浜FM
得点者:(浦)キャスパー・ユンカー3
(横)水沼宏太、アンデルソン・ロペス、宮市亮
「後半はこうあるべきだという姿を見せることができた」
キャスパー・ユンカーのハットトリック、共通点は、絶妙なポジショニングと落ち着きだった。
0-3のビハインドで迎えた後半、浦和の選手たちは逆に吹っ切れていた。リカルド・ロドリゲス監督が「リスクをかけた」と決断したように、3点を奪うために一気にパワーを上げて相手のボールを狩りに出た。
その開始直後の47分、岩波拓也のパスをDF2人の間で受けて抜け出したユンカーは、得意の左足でGK高丘陽平の右をクールに抜いて、いきなり1点を返してみせた。
勢いづくには十分だった。前半に自分たちが横浜FMから食らったように、さらにボールハントの速度と強度を増してゴールを目指した。交代選手がそれをパワーアップさせた。
81分には、岩尾憲の縦パスを松尾佑介がフリックして最終ラインをブレイクすると、抜け出したユンカーが今度は左足で左上を抜く豪快フィニッシュ。87分には大久保智明が得意のドリブルで左サイドからゴールラインと平行にすり抜けてから、寄せてきたDFの間の狭いコースを通し、ゴールのすぐ手前にいたユンカーに差し込むと、そのまま右足でコースを変えて流し込んだ。ついに同点だ。来日初のハットトリックは、J1リーグで今季初めて、通算251回目で、浦和としては18回目となった。
「どのチームもどこかにスペースを空けるものです。そこを利用するためには正しいポジショニングが必要で、後半はマリノスの弱点を利用することができました。そこが前半と後半の違いでした」
ユンカーが静かに振り返るように、ポジショニングで優位に立った。最初の2つのゴールはまさに、DFに捕まらない絶妙な場所に立って背後の広大なスペースへとすり抜けている。最後のゴールも、大久保のドリブルに対応しようと相手が動いたのと対照的に、ゴールの中央で誰にも寄せられない場所に留まったポジショニングが生きた。
だが、ハットトリックを決めても勝てなかった事実を忘れているわけではない。
「2番目にいい結果、つまり引き分けになりました。勝つために戦いましたので残念に思います」
「0-3でも応援してくれて、サポーターには借りがあります。彼らにお返ししなければいけない」
この試合で1万9425人が訪れ、Jリーグの歴史で初めてホーム通算1500万人を超える観衆を集めた。そんな熱いサポーターのために戦った。
それでも、6試合連続でドロー。ここまでは1-1が2試合、0-0が3試合だった。今回は3点のビハインドを「全員が100パーセントのプレスをかけて」追いついたことに、これまでとは異なる大きな価値を見出している。
「攻撃的なサッカーができたので、見てくれた人も楽しめたと思います」
「前半は良くなかったけれど、後半はこうあるべきだという姿を見せることができました。このスタイルをお見せすれば、どのチームにも勝てると思います」
自信も取り戻しつつある。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE