上写真=川崎Fのホームでは福岡戦から対面式の会見に。鬼木達監督は「徹底して攻めたいところを攻めようと」(写真◎J.LEAGUE)
「明確に人と人がつながったほうがいい」
脇坂泰斗と遠野大弥。ACLで敗れた失意を跳ね返すように、川崎フロンターレは帰国後に清水エスパルス、アビスパ福岡に連勝した。そこでインサイドハーフの2人が順にゴールを挙げた。
しかも、どちらも鮮やかなコンビネーションからだ。清水戦の脇坂の今季リーグ初ゴールは、遠野、レアンドロ・ダミアン、脇坂、家長昭博とつないで最後は右の角度のないところから脇坂が突き刺した。福岡戦の遠野の、同じく今季リーグ初ゴールは、右スローインからレアンドロ・ダミアン、山根視来とつないで、ゴール正面にもぐり込んだ遠野が右足を振って決めた。
「ここに来て、少しずつできているかな」
そう見ているのが鬼木達監督だ。攻撃のイメージを合わせる作業に余念がない。
「自分としても、もう少し明確に人と人がつながったほうがいいと思っています。だから、そこはわかっているだろう、ではなくて、映像も使いながら、こうするとこんな形で3人目がつながっていくよね、とか、ここをサポートするとこういうことが起きるよね、と提示しているので、そこで選手たちに選んでいってもらえればいいと思います」
センターバックがより攻撃に関わるように求めるのもその一つ。福岡戦では相手の2トップのプレスを、車屋紳太郎、谷口彰悟で横に動かしてから降りてきた脇坂に当ててかいくぐると、その2トップの背中に橘田健人が入ってフリーになり、脇坂のパスをワンタッチで鋭く前線に滑り込ませた65分のシーンがあった。軽やかなプレス回避術。
「あの中でも選択肢がいくつもある状態を作りたいんです。彰悟からの縦パスも、泰斗だけではなくてほかの選手も関われるようにしたい。健人に出たボールも違う選択を持ちながら、内側にいた健人を見ることができたのが良くて、ただボール1個分か2個分ずれたと思います。でも、その細かいところで話が進められるようになってきたので、とてもポジティブです」
より細部にフォーカスできる状態にまで整ってきたというわけだ。
最終ラインの攻撃力で言えば、佐々木旭の存在が今季の新定番。左サイドバックとして、ルーキーながら堂々たる存在感だ。
「あまりほめると成長が止まりますけど」と笑いながら、鬼木監督は期待を隠さない。
「ACLから帰ってきて変わったと思いますし、変わらなければいけないタイミングです。あの敗退は彼にとって大きな出来事だったと思うので、彼自身も思うところがあったでしょうし、そういう話もしました。でも、これまでも何度も言ってきましたけれど、自信を持ってピッチに立ち続けることを一番に求めているので、この2試合はしっかりとやってくれています。1年目の選手はぐんぐんと伸びていくので、恐れずにやっていってほしい」
チームも選手も立ち止まっている暇はない。鬼木監督自身もさらにハイレベルの要求をしながら、チームを高めていく。それはひとえに、この思いがあるからだ。
「想像するよりすごいものを出していってほしい、そう思っています」