上写真=アジアデビューを果たした角田涼太朗が、マスカット監督と会見で意欲。「目の前の試合にしっかり準備を」(写真◎Y.F.M.)
「自分たちが相手に合わせることはしません」
横浜F・マリノスは初戦で地元ベトナムのホアンアインザライに勝って、第2戦で韓国の全北現代に敗れ、1勝1敗でグループ2位。5グループのうち成績上位の3つに入らないと、2位でも次ラウンドに進出できないから、連敗はもってのほかだ。
続く相手はオーストラリアのシドニーFC。しかも、同じ相手と2試合連続で戦うスケジュールだ。ケヴィン・マスカット監督にとっては母国のクラブで「よく知っている」という相手。監督のスティーブ・コリカは現役時代、2000年から2シーズン、サンフレッチェ広島でプレーし、シドニーFCではカズ(三浦知良)とチームメートだった。同じ1973年生まれのマスカット監督も「代表で一緒にやった」仲だという。
「でも、相手がどうこうというよりも、9割は自分たちのサッカーをどうやっていくかです」
どんなときも貫き通すのがマスカット監督の、横浜FMのやり方というわけだ。
「私たちのサッカーは簡単ではありません。難しいサッカーを求めていますし、日本とは違った地でコンディションや気候が異なる状況で、より難しさがあります。自分たちのサッカーをどう表現していくかが大事なのです」
そんな難しい戦いの中、全北現代戦で「アジアデビュー」を果たしたのが角田涼太朗だ。實藤友紀とセンターバックでコンビを組んだ。
「やはりアジアの舞台ではJリーグとは違う戦い方になります。先日のゲームはチームとして負けたので悔しさが残りますが、日本とは違う気候やピッチを言い訳にしてはいけないと思います。負けたからといってチームがマイナスに向いているかといえばそうではなくて、前を向いて準備を進めています。グループステージ突破という目標はありますけど、目の前の1試合にしっかり準備していきたい」
全北に負けたとはいえPKによる失点で、角田は危なげなく相手の攻撃を抑えた。手応えはある。ただ、シドニーFCのFWはさらに強力だ。
「まずはそういうフォワードと対戦できるのは幸せなことです。こういう機会がないとなかなか対戦できないので楽しみながらやっていきたい。どうやって抑えるかは、個人の問題もそうですが、チームとして戦っていく上でもう一人のセンターバックやボランチ、サイドバックと声をかけ合いながら連係して戦うことが大事です。個人で負けないことを前提に置きながら、いかに点を取らせないように守るか、考え続けてプレーしたい」
ところで、マスカット監督が90パーセントは自分たちにフォーカスすると言うならば、残りの10パーセントはどんな位置付けになるか。
「10パーセントの部分は相手のことがほとんどになります。相手の強みはなにか、どういう選手がいてどういうチームなのか、ということを共有することが必要です」
しかし、ここからがマスカット監督のポリシーが色濃く表れるところ。
「自分たちが相手に合わせることはしません。フタを開けたら違うサッカーをしてくるかもしれません。だから、一つひとつの試合に向けてチャレンジしていくことにワクワクします。どれだけ自分たちのサッカーができるか。マリノスのプライドを持ってピッチに立ちたい」
アジアの舞台でもまっすぐに理想を追い求める。マスカット監督にとっては、母国のライバルを相手にその正しさを証明する一戦になる。