FC東京は4月6日の明治安田生命J1リーグ第7節でヴィッセル神戸を迎える。アルベル監督はボールを大切にしてプレーを進めるスタイルを打ち出しているが、前節の横浜F・マリノス戦はあえてボールを相手に譲ることで試合を優位に進めるプランだったという。その理由に、戦い方の幅の広さが見て取れる。

上写真=アルベル監督はバルセロナの育成部門出身。そのバルセロナのスター、イニエスタとの再会を前に「対戦できることを心から誇りに思います」(写真提供◎FC東京)

「神戸は勝利に飢えている」

 4月最初のゲームとなったアウェーの横浜F・マリノス戦は、1-2の黒星。開幕戦で川崎フロンターレを相手に押し込みながらも0-1で惜敗し、この日も1点差負けだ。昨季の1位と2位に対して勝ててはいないものの、内容を踏まえれば、スタイル転換を図ったばかりのクラブが強敵を追い詰めたと言うこともできる。

「フロンターレにはボール保持率で上回られると難しい試合展開になりますが、マリノスはあえてボールを譲ることによって、奪ってからカウンターの場面を作ることはプラン通りでした」

 アルベル監督はこう振り返る。ボールを譲る?「ボールを愛せ」と言い続けてきたアルベル監督が?

「フロンターレは高いポゼッション率を維持して押し込んでプレーし続けることを狙って、チャンスを作る特徴があります。でも、常にピッチ全体でポジショナルな戦い方をしているかというとそうではありません。押し込んでから、奪われてもただちにハイプレスで奪い返すのが武器なのです」

 相手にボールを渡すとその特徴を存分に出させてしまう。だから開幕戦は、こちらがしっかりボールを握る戦いで挑んだのだ。だが、横浜FMに同じ方法で立ち向かえば、たちまち相手の思うツボだ。

「マリノスの特徴はポゼッションよりもウイングのスピードを生かす攻撃です。スピードを武器としたウイングがいる場合には、スペースを必要とするものです。その典型的なプレーが2失点目だと思います。ウイングの前にスペースが広がってカウンターを食らいました。ただ、マリノスのカウンターが危険であるのと同時に、こちらがカウンターでチャンス作ることもできるという表裏一体の試合でした」

 つまり、スペースを与えないようにするために、相手にボールを渡しておいて主体的に攻めてきてもらって、逆にこちらがカウンターを仕掛けるスペースを生み出す、というプランだった。

「前半は典型的で、カウンターが武器のマリノスに対して、こちらもカウンターで多くのチャンスを作りました」

 8分に先制された後の4分後の同点ゴールも、相手陣内で渡辺皓太の足下に入ったボールをディエゴ・オリヴェイラが奪い、カウンターから安部柊斗が決めたものだった。誤算だったのは、後半開始早々に2点目を奪われたこと。

「そのためにこちらがイニシアチブを握って攻めることになりました。それがマリノスのカウンターを起動することになって、より多くのチャンスを作られました」

 あえてボールを相手に預けるはずが、リードを許したばかりに結果的には預けられる、という流れにひっくり返されてしまった。

「プランは試合ごとに変わってきますが、決定づけるのは瞬間瞬間の選手の判断です。最終的には判断を適切に下してプランに基づいてプレーできるかにかかってきます。ただし、適切な判断を下してプレーできても、最後に決定力を欠いてしまうと勝てないのがサッカーというものなのですが」

 では、次のヴィッセル神戸戦のプランは? リュイス監督も同じカタルーニャ出身で、バルセロナの育成部門で手腕を発揮してきたアルベル監督が、バルセロナの誇りであるアンドレス・イニエスタと対戦する。ボージャン・クルキッチもバルセロナの育成組織出身だ。そんな彼らとの対戦で、大きな危険を察知している。

「リュイス監督が得意とするのは、4-4-2のシステムを活用して、コンパクトに守備をしてから攻撃に出ることです。カウンターアタックも鋭く、もちろんボールを大切にすることも忘れていません。危険な要素としては、監督交代直後はチームが緊張して集中している状態だということです」

 三浦淳寛前監督のチームをひとまず暫定的に預かった形のリュイス監督は、前節で初めて指揮を執った。しかし、京都サンガF.C.に逆転負けを喫して、4分け4敗といまだに勝利がない。それが逆に危険要素になると、アルベル監督の警戒心を強める。

「われわれも勝利を求めていますが、神戸は特に勝ち点を取りたいという意味でわれわれと同等かそれ以上に勝利に飢えていると思います。でも、私たちは自分たちのスタイルとともに成長している段階ですから、この試合を通じても成長することを期待したいと思います」

 アルベル対イニエスタ&ボージャン。アルベル対リュイス。神戸に加入した橋本拳人が、古巣のホームスタジアムで復帰戦に臨む可能性もあるという。それだけでも見どころ満載の90分が、間もなくやってくる。


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