上写真=若原智哉は新たな守護神争いに燃えている(写真提供◎KYOTO.P.S.)
「このJ1で絶対に出たい」
「たまたま手が合ってくれてよかったです」
偶然、で片付けるにはもったいないスーパーセーブを見せた。京都サンガF.C.のGK若原智哉は3月12日のJ1第4節湘南ベルマーレ戦で、敗戦の危機からチームを救った。
1-1で迎えた90+2分、右からの山本脩斗のクロスがファーに送られ、大岩一貴がヘッドで折り返すと、中央で大橋祐紀がヘディングシュート、これがバーをたたいてこぼれたボールに瀬川祐輔がダイブしてきた。このヘディングシュートを、若原が右手一本でかき出したというわけだ。
「あれは突っ込むしかないと思って突っ込んだんですけど、たまたま手が合ってくれてよかったです」
とっさの反応で追加点を許さず、アウェーで勝ち点1を持ち帰った。
昨季はJ1昇格の立役者となったが、今季はGK5人体制となり、新加入の上福元直人がゴールを守ってきた。第3節のジュビロ磐田でその上福元が退場となると、前半のアディショナルタイム、45+3分に若原に出番が回ってきた。初のJ1でのプレー機会が思わぬ形で巡ってきたが、3失点。1-4で敗れた。
「前節の磐田戦で途中出場してから失点が増えてしまったので、この試合は絶対にやらせない気持ちで臨みました。ディフェンダーも体を張ってくれて守りやすかった」
それが、あのビッグストップにつながったのだ。湘南戦でも78分に麻田将吾が退場して苦しんだが、上福元も麻田も守備ラインの裏を突かれて止めに入ったプレーがレッドカードの対象になった。しかし、ひるむつもりはない、という、このチームの意志を若原が代弁する。
「怖がってラインを下げてしまうと、僕たちではなくなってしまいます。できればノーカードで対応したいけど、そういったことを恐れず、どんどんハイラインで自分たちらしくやっていければいい」
ただ、強気だけで戦っているわけではない。初めてのJ1では謙虚さも持ち合わせる。
「J2と違ってどのシュートも枠に飛んでくるので、そこがJ1とJ2の違いかなと思います。僕がセーブしたといっても1、2本だったし、手応えがないわけではないですけど、もっともっとやっていかないといけないという感じです」
謙虚は生来のキャラクターからくるものでもあるが、ライバルが4人もいるからでもある。上福元、太田岳志、松原修平のほかにニュージーランド代表のマイケル・ウッドも来日して、ますます争いは激しい。
「5人いる中で誰が出るかは毎試合決まっていないので、毎日の練習からアピールしていきます。1試合半に出ましたけど、このJ1で絶対に出たいという気持ちが改めて大きくなりました。その気持ちを他のキーパーに負けないぐらい前面に出してやっていきたい」
新しい背番号「1」も、その重みが必要以上に気にならないほど馴染んできた。
「着けさせていただいているからには見合ったプレーしなければいけないので、もっともっとやらなければいけないと思っています」
もっともっと、が若きナンバー1のキーワードになりそうだ。