上写真=チームの2点目を決めたアダイウトンと松木玖生が喜び合う!(写真◎J.LEAGUE)
■2022年3月12日 J1リーグ第4節(味の素ス/観衆14,415人)
FC東京 2-1 広島
得点者:(F)森重真人、アダイウトン
(広)鮎川峻
・FC東京メンバー:GKヤクブ・スウォビィク、DF渡邊凌磨(46分:長友佑都)、森重真人、エンリケ・トレヴィザン(46分:三田啓貴)、小川諒也、MF安部柊斗、木本恭生、松木玖生、FW紺野和也(63分:永井謙佑)、ディエゴ・オリヴェイラ(90+1分:山下敬大)、アダイウトン(80分:東慶悟)
・広島メンバー:GK林卓人、DF野上結貴(82分:青山敏弘)、荒木隼人、佐々木翔、MF藤井智也、塩谷司、野津田岳人、満田誠(82分:川村拓夢)、浅野雄也(69分:柴崎晃誠)、森島司、FWジュニオール・サントス(69分:鮎川峻)
勝った時こそ反省を(アルベル監督)
広島の狙いは、はっきりしていた。高い位置からプレスをかけてボールを奪い、ショートカウンターにつなげていく戦い方だ。立ち上がりはその狙いがうまく表現できていた。FC東京はボールをつなぐことができず、蹴り出すほか手がない状況に陥った。
この日はFC東京のMF青木拓矢が出場停止で、中盤の逆三角形の底、アンカーを木本が務めていた。広島の1トップ+2シャドーはその木本へのパスルートを消しながらFC東京の最終ラインにプレッシャーをかけ、スムーズなビルドアップをさせなかった。相手が苦しい体勢から蹴り出したボールを回収しては攻めに転じてみせた。
FC東京は攻撃の開始位置は低くなり、広島は高い位置から連続攻撃を展開。右CB野上のスルーパスに浅野が抜け出して決めた11分のゴールはオフサイドとなったが、20分過ぎまでは完全に広島がペースを握った。試合の入り方に成功したのはアウェーチームの方だった。
しかし、FC東京も押されるままではなく、割り切ることで徐々に流れを引き寄せていく。ビルドアップがままならないと理解すると、蹴らされるのでなく、意図をもって蹴っていくプレーを選択するようになる。森重は「我慢の時間」と振り返ったが、広島のハイプレスを回避し、ロングボールを蹴って、その回収に力を注ぎ始めた。セカンドボールを松木や安部が鋭いアプローチで前向きに拾ってD・オリヴェイラや紺野につなぎ、チャンスを作り出した。
それでもゴールは決まらず、前半はスコアレスで後半に折り返した。FC東京はトレヴィザンに代えて三田を投入。木本がCBに下がり、三田がトップ下に入る4-2-3-1に陣形を変更した。結果的にこの選択がFC東京にポジティブな変化をもたらす。ボールが循環し始め、60分に敵陣やや左でFKを獲得。三田が左足でカーブのかけたボールをボックス内へ送ると、これを広島DF佐々木のマークを外した森重が頭で叩き、先制に成功した。三田の正確なキック。森重の体の使い方の巧さと空中戦の強さが組み合わさり、アルベル監督も指揮適した通りまさに優れた「個の力」で取ったゴールだった。
その1分後。今度は相手のお株を奪うプレーからゴールを決める。三田のプレスで相手ボランチ塩谷のキックミスを誘うと、紺野がボールを奪取。そこから三田、D・オリヴェイラとつないだボールを、後方から走り込んだ安部がシュート。GKに一度はストップされるがそのこぼれ球をアダイウトンが蹴り込み、瞬く間に2点差とした。
スキッベ体制となった広島が身上とするゲーゲンプレスをやり返すような形でFC東京はゴールを手にしたが、光ったのはゴール右下を狙いすまして射抜いたアダイウトンのシュート技術だ。ここでも個の力がモノをいった。
畳みかけに成功したFC東京がそのまま押し切るかに思われたが、試合は2-0で決着しなかった。2点のビハインドを背負った広島がギアを入れ直し、69分の2枚替えをきっかけに攻勢に出る(J・サントス→鮎川、浅野→柴崎)。74分、敵陣でボール奪取に成功した塩谷のスルーパスに鮎川が抜け出し、ネットを揺らした。
残り15分は互いに攻め合う激しい展開になる。広島は鮎川、野津田がゴールに迫るもシュートが決まらず、FC東京も速攻から東がネットを揺らしたが、オフサイドで取り消された。アディショナルタイムまで走り合い、奪い合い、攻め合い、守り合った激闘。それでも次の1点は生まれず、試合は2ー1で終了し、FC東京が今季初のホームゲームで勝利をつかみ取った。
「試合結果には満足しています。けれども内容には満足していません。今までの試合で最も質が低かったと思います。もっともっと自分たちに矛先を向けて要求していかないといけない。成長段階ではこういう試合があるのも予想はしていました。しっかり今日の課題を受けて成長しないといけないと思います」
FC東京のアルベル監督は勝利を喜んだ一方で、反省も口にした。適切な場所に立ち、ボールを動かし、能動的にプレーしていくことがチームのコンセプト。この日は広島の前輪駆動型のプレーに気圧されて、序盤は意図するプレーがまったくできなかった。「成長過程の試合」であり、「個の力で勝つことができた」と指揮官は振り返ったが、「勝った時こそ反省して成長したい」とも強調。課題をしっかり受け止めて今後につなげたいと語った。
FC東京も広島も、ともに今季就任した指揮官のもと、チーム作りを進めている段階だ。そのことは両監督とも認めるところだが、この日の時点で勝敗を分けたのは、ここぞの場面で個の力をしっかり発揮できるか否か。その点でFC東京に分があった。先制ゴールを決めたキャプテンの森重は「勝ちながらチームが成長していくのがベストなので、勝ち点3を取れたのはよかったですけど、自分たちでもっともっと試合内容をよくするんだということを頭に入れて(次に)準備していきたい」とさらなる成長への意欲を示した。
実戦にまさる経験はなしーー。FC東京は中2日でルヴァンカップの磐田戦を戦い、そこから中3日でJ1第5節、アウェーの京都戦に臨む。そして広島は1週間後、昨季王者の川崎Fをホームに迎える。