川崎フロンターレが「リベンジ」に臨む。3月2日の明治安田生命J1リーグ第10節で迎えるのは浦和レッズ。2月12日の富士フイルムスーパーカップ2022で0-2と苦杯を味わわされた相手だ。鬼木達監督は一度負けた相手に再び敗れるわけにはいかないと、勝利を誓う。

上写真=敗れた横浜FMから中2日で快勝に導いた鬼木達監督。「気持ち」を強調した(写真◎小山真司)

ダイヤモンド対ダイヤモンド

 にわかには信じられないというか、たった中2日であれほど見違えるまでに修正できたのは、「気持ち」のおかげなのだという。

 川崎フロンターレは、2月23日の横浜F・マリノス戦で2-4と逆転負けを喫してから、26日の鹿島アントラーズ戦では相手を圧倒して2-0で勝利を収めた。谷口彰悟も知念慶も短い時間で修正できた理由に「気持ち」を挙げたが、鬼木達監督はいったいどんな秘策を仕込んだのか。

「強調したのは、やはり気持ちのところです。マリノス戦では攻撃的にいこうとしたところで、そういう大事なものを自分が提示しきれなかったんです。そこは抜いちゃいけないというか、基準を高くしてやっていこうと(鹿島戦に向けて)話しました」

 そもそも、2年連続チャンピオンである。地力は高い。問われるのはそれを出せるか出せないかという部分で、気持ちというスイッチさえ入れば、このレベルの戦いは当然のこと、という認識で臨んだ。眠れる王者は、こうして目を覚ました。

 特に前半は圧倒的で、相手のミスも誘って2分に知念慶が先制、17分には初先発のルーキー、佐々木旭がセットプレーから決めたプロ初ゴールが追加点になった。しかし、相手は鹿島である。後半は攻撃のパワーを受けることになった。

 鹿島の仕掛けは、中盤の組み換えだった。最終ラインの前に中村亮太朗を据えて広角にボールを散らし、右に樋口雄太、左にディエゴ・ピトゥカ、トップ下に荒木遼太郎とダイヤモンド型にシフトしてきた。鬼木監督も即座に対応し、おなじみの4-3-3システムを鹿島と合わせるように4-4-2へ。家長昭博をトップ下に置いて中村をチェックさせ、右に脇坂泰斗、左にチャナティップ、ボランチに橘田健人と同じくダイヤモンド型に並べて、小林悠と知念慶を2トップにしてカウンターを狙った。

 素早い対応について、鬼木監督は相手の状況とスコアを考慮しての決断だったと明かす。

「状況次第ではあるのですが、やはり点差のところですね。1点差なのか2点差なのかで大きく違います。後半の最初の5分の間に相手にチャンスがあって、もう少し自分たちの形で押し切っていきたい思いもあったのですが、それよりも、2-0でもあったし、一度早めに相手の勢いを抑えて落ち着かせたほうがいいかなと」

 立ち位置を変えても「大きなピンチはなかった」と混乱に陥らなかったのは、選手の頭の整理ができているからだという。

「やり方を変えるだけでも選手には迷いはないという感じが、この何試合かでつかめていました。自分の提示に対して選手はよく反応してくれました。ゲームをコントロールするところでは、ボールを握る時間が少なくなったので、自分のほうでもう少しボリュームを上げながらやっていかなければいけなかった。そこはこれから選手と合わせながらですね」

 62分にはチャナティップに代えて遠野大弥を入れて推進力を維持し、75分に足をつった佐々木旭を登里享平に代え、83分には塚川孝輝を入れて橘田と並べて中盤のセンターを強化、同時にレアンドロ・ダミアンを入れて前線のプレスの強度を高めた。そんな交代策も、攻撃のボリュームと守備の安定のバランスを考慮した上でのものだったわけだ。

 この勝利で、次の浦和レッズ戦に向かうモチベーションもさらに高まる。2月12日の富士フイルムスーパーカップ2022で0-2で敗れた相手だ。盛んに攻めながら守りきられたから、やはり攻め抜きたい。

「リベンジ、という言葉ではないですが」

 そう断った上で、それでも鬼木監督は2度も負けるつもりはない。

「自分たちのリーグ戦への思いやホームで勝つことの思いを含めて出していきたいし、単純に一度負けた相手にまた負けたくないも思いも正直あります。しっかり自分たちらしく、強気で勝ちたいと思います」

 一気にそう話すと「やっぱり、リベンジという言葉が合うかもしれないですね」とニコリ。一度敗れた相手に勝ちたいという強い思念は、隠しきれるものではない。


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