上写真=鬼木達監督は「時間が必要」としながらも、その先に手にする成果を信じている(写真◎小山真司)
「ゲームの中で修正していきたい」
「これではACLで優勝する力はまだない、と選手たちに伝えました」
川崎フロンターレの鬼木達監督は、選手に訴える。一番伝えたかったのは、「まだない」というところだ。
「簡単に勝てる力はないと思っています。でも、一気には無理でも、意識することで、試合を重ねるごとに徐々に積み上がっていく。このチームの伸びしろだと思っています」
2月12日の富士フイルムスーパーカップ2022で浦和レッズに0-2で敗れた。18日のJ1開幕戦ではFC東京に勝ったものの、押し込まれる時間が長くなり、難しい戦いになった。前半23分ごろに相手が監督の指示で立ち位置を整理してきてから、盛り返された。
「あそこでは、相手のこともありましたけど、自分たちの時間でしたから構わずいってほしい、と思っていました」
「ただ、実際に流れが悪くなったというか変わっていきました。相手の立ち位置よりは自分たちの失い方が悪くてカウンターを浴びて、シュートまで持っていかれました」
あくまで自分たちのミスが原因だったという分析だ。「序盤のチャンスで決めていれば問題はなかった」のも確かだった。だが、苦しめられたのは事実。相手を見るサッカーで圧倒してきたこの2年の戦いを踏まえた上で、改めて「また一からのスタート」と繰り返していく。
「時間は必要かなと思っています。チャナティップもキャンプでは最後に合流したし、日本代表に参加していた(谷口)彰悟も(山根)視来も(スーパーカップの)何日か前に合流したばかりで、特に視来は練習試合もほとんどしていなくてぶっつけで、大変な環境でした。(浦和戦で先発した)ジョアン(シミッチ)も久々だったし、(大島)僚太もそうで、すり合わせる時間は必要だと思っています」
開幕から過密日程、しかもFC東京から横浜F・マリノス、鹿島アントラーズ、浦和レッズ、ガンバ大阪と5試合連続で強豪が待ち受けるハードなスケジュールだ。だからその「試合」の重みが増していく。
「ゲームが終わってからではなく、ゲームの中で修正していきたい。だから、勝つことがやはり重要で」
どんなに劣勢だとしても、ハードワークをいとわずに、セットプレーで仕留める。そんなFC東京戦で見せたのは「うまい」に「強い」が加わった姿だ。いまはアジア王者になる力はなくとも、開幕戦で示したそのどちらをもさらに高めていくことで、頂上からの景色を眺めることができる。鬼木監督にはその手応えがある。
だから、ACLで優勝する力は「まだない」のだ。