上写真=小川諒也は「新しいサッカーで新鮮」とはつらつと沖縄キャンプに臨んでいる(写真提供◎FC東京)
「左サイドで上のレベルを目指したい」
沖縄キャンプで鍛えている小川諒也が現地からのオンライン取材に臨んだのは、1月27日の午後だった。この夜、日本代表がワールドカップ最終予選で中国と対戦することになっていた。
「試合は見ますよ。代表戦だけではなくて、ほかの試合もよく見るので」
小川は昨年、日本代表として活動し、ワールドカップ2次予選では3試合に出場している。
「サッカー選手である以上、代表を目標としていますし、今年はワールドカップもあるのでまた代表に戻れるようにしていきたい」
小川がプレーする左サイドバックで、日本代表の第一人者といえば、長友佑都。FC東京のチームメートである。小川は昨年9月に左ハムストリングス筋挫傷を負って離脱したままシーズンを終えたから、今回の代表メンバーに選ばれなかった。だが、FC東京でも日本代表でも長友と戦っていくことになる。
FC東京では昨年、バングーナガンデ佳史扶が台頭してきた時期には、小川が右サイドバックに回ってプレーしていた。
「右サイドをほとんどやったことなかったので、新しい感覚で楽しかったです」と改めて振り返る。昨季唯一となったゴールは、そのバングーナガンデが左から折り返し、GKが弾いたこぼれ球を右サイドバックの位置から中央に入ってきた小川が左足で決めたものだった。自慢の左利きを右サイドで生かすべく、体を中央から逆サイドに向けてオープンパスを送ってチャンスメークするなど、新境地も開いた。
もちろん今季は、そこで得た新鮮な気づきを本来の左サイドバックで生かすつもりだ。
「自分は左サイドで上のレベルを目指したいと思います。右サイドでプレーして、中のエリアにポジションを取ることも多くて、それが今年、左に戻ってからも中に入るプレーに生かされると思います」
まさしく、アルベル監督に求められているのもそこだという。
「例えばアダイウトンと縦関係を組むとすると、アダイウトンが外なら自分は中、アダイウトンが中なら自分は外、というように、レーンが重ならないように、とだけアルベル監督には言われています」
キャンプが後半へと差しかかり、日々、アルベル流の新しい戦術を積み上げている。サイドハーフとの縦関係における原則は提示された。しかし、「ゴール前に攻め込んだときには自分たちのアイディアで崩してくれと言われていて、やりやすいですね」と自由度の高さを歓迎している。
「サイドバックでのポジショニングについても言われますし、もらう位置や受けてからのオープンに持つ持ち方のことも言われます。攻撃をサイドバックから始める形が多くなると思うので、自分たちサイドバックが舵を取らないとチームがうまくいかない」
アルベル監督が2年、指揮を執った新潟がまさにそれで、サイドバックはサイドバックであり、ボランチであり、サイドハーフであり、トップ下であり、チャンスメーカーであり、フィニッシャーだった。
「この人と一緒に、このサッカーをやれば、個人としてサッカー選手としてのレベルが上がると思ったので東京に残りました」
すっかり信頼を寄せる新指揮官の下で、新しい小川諒也が生まれる予感がする。