川崎フロンターレが11月3日に明治安田生命J1リーグで連覇を決め、翌日にはゆかりのある7人が日本代表入り。チャンピオンチームが日本サッカーの話題を引っ張る中で、史上最多リーグ優勝監督となった鬼木達監督が見据えるのは日常だ。選手の良さを引き出す方法を探す日々に変わりはない。

上写真=鬼木達監督は史上最多となる4度目のリーグ優勝。「ホッとしたのが一番ですね」(写真◎J.LEAGUE)

「チーム全員が代表に入ってほしい」

「日常を変えなければならない」

 鬼木達監督の源流だろう。11月3日、浦和レッズに引き分けてJ1リーグで5年で4度目となる優勝を決めて史上最多リーグ優勝監督となり、その翌日には「愛弟子」とも言える面々が続々と日本代表入りを果たした。前回の最終予選で出色の出来を示した守田英正と田中碧のほか、板倉滉も引き続き選出され、谷口彰悟と山根視来が復帰、三笘薫と旗手怜央が初めて選ばれた。

 J1のチャンピオンチームが日本代表に大きな影響を与えることは、むしろ健全なことだろう。

「自分としては2年連続で優勝した中で、優勝チームから代表に輩出できないところには思いはあったので、どうやったら彼らが日本でプレーしながら代表に行けるのかは、チームの勝利とともに考えていたことです」

 そのために見据えたポイントは「強度」と言い切る。だから、日常を変えることから始めた。すべてにしつこく強さを求めた。こうして、J1で誰もがうらやむ強くてうまくて魅了して勝てるチームを作りながら、日本代表に1人でも多く送り込もうと取り組んだ。以前、口にしていた究極の理想は「チーム全員が代表に入ってほしい」だった。

 日本代表の森保一監督がオーストラリア戦で川崎Fの4-3-3に似たフォーメーションを採用したことと、今回の「フロンターレ組」の大量選出が結びつけて語られることも多い。ただ、鬼木監督自身の意図はやや異なる。

「うちでやっていたら、システム云々は関係なく、どんなシステムでもどんな監督さんでも代表でプレーできるんだという選手を育てなければいけない」

 まさに「人を育てるのが自分の仕事」と掲げる生粋の理想的マネジャー気質が実を結んでいる。

 鬼木監督の下でプレーした選手が間違いなく共通して話すのは、「頭でサッカーをする」こと。システムはプレーをスムーズにするための道具であって、実際にはいつどこで誰がどんなふうにプレーするかを考えて、考えて、考えてプレーするという意味だ。一方で面白いのは、鬼木監督自身が4-3-3とか4-4-2とはっきりと口にすること。数字の並びに意味はないとしてあからさまに嫌悪感を示す監督のほうが多いが、鬼木監督はむしろ逆。それが絶対ではないという確かな共通認識が浸透しているから、口にすることで整理されるメリットを生かしている。

 その4-3-3は、2019年にリーグ優勝を横浜F・マリノスに奪われたからチャレンジしたものだった。20年、21年に4-3-3をベースに連覇を果たし、さて、次の挑戦は?

「いまはまったくないですけれども」と鬼木監督。

「もっともっと人を生かさなければいけないと思っています。チームは結果的に勝ってはいますけど、そのチームのために個が消えてはいけない。選手全員の全部を引き出すのは難しいですけど、一人でも多く個の力を引き出す方法はないかな、と考えています。そこにチャレンジできればいいかなと」

 その方法を考えるために、鬼木監督は今日も忙しい。


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