横浜F・マリノスでは、チームで最も長い時間にプレーしていたセンターバックの畠中槙之輔が全治約6カ月の重傷。ピンチが訪れている。しかし、實藤友紀がその穴を埋めるべく、神経を研ぎ澄ませている。ゴールを守り、ゴールを攻める「ハイブリッド・センターバック」が、チームのために、畠中のために全力を尽くす。

上写真=實藤友紀は鹿島戦で負傷の畠中槙之輔に代わって登場。以降を無失点でしのいだ(写真◎J.LEAGUE)

「やるべきことは最低限できた」

 逆転優勝を狙う横浜F・マリノスに衝撃が走ったのが、8月最後の試合となった28日の鹿島アントラーズ戦でのこと。30分に決められたこの日2つ目のゴールシーンの際に、畠中槙之輔が上田綺世を追いかけたところで突然倒れ込み、足を痛めて交代、検査の結果、左ハムストリング付着部損傷と診断され、全治は約6カ月という重傷だった。

 センターバックではチアゴ・マルチンスも負傷でこの試合を含めて中断前の3試合にわたって戦列を離れていた。そこに今度は、チームで最も長い26試合、2238分でプレーした畠中まで離脱。苦しい状況を迎えている。

 しかし、これをみんなで乗り越えようと話すのが實藤友紀だ。鹿島戦ではその畠中に代わって、センターバックに入っている。

「シン(畠中)が大きなケガをしてしまって、あいつがやってきたことを考えると大事な戦力を失ってしまいましたが、僕たちメンバー全員でしっかりカバーして、僕自身もチャンスだと思っているのでしっかりといいプレーをして、チームを勝たせられるようにやっていきたいと思います」

 鹿島戦は5試合ぶりのプレーとなった。久々だったが、ピッチに入ってからは無失点に抑えている。

「0-2だったので、後ろはとにかくリスク管理をはっきりさせて、みんなの気持ちとしても点を取りに行くところで前向きにプレーしましたし、結局点は取れなかったけれど惜しいシーンもありました。引き分けに持っていければ一番良かったですけど、鹿島の強さや割り切り方ではなかなか点が取れませんでした。それでも、自分が入ってやるべきことは最低限できたと思っています」

 そんな一定の手応えは得た。この2週間の中断期間に時間をかけたトレーニングを経て、残り試合には貴重な戦力になるはずだ。

「自分の特徴はビルドアップで前に運べることです。1枚、2枚ははがしていくことを意識しているし、それが武器だと思っています」

 高校まではFWなど攻撃的なポジションを努めていたというから、そもそも備わっている能力だ。そして、FWだったからこそわかる体感がそうさせるという。

「自分がフォワードだったときに、(センターバックに)持ち運ばれるとしんどかったんです。後ろから追わなければいけないし、コースを限定できなくなってプレスが無効化されてしまうからです。だからいまは、相手の嫌がるプレーをやろうと思っています」

 實藤が持ち運ぶときは、相手を困らせてチャンスを組み立てる第一歩なのだ。そしてもう一つ、自らが持ち運んでいく理由がある。

「本当にシンプルにゴールを狙いにいっています」

 ゴールを守り、ゴールを攻める。まさに攻撃的な資質を持った「ハイブリッド・センターバック」としての思想が、そのプレーからにじみ出るのだ。


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