上写真=前田大然(左)のゴールを水沼宏太が素晴らしいパスで導いて喜び合う(写真◎J.LEAGUE)
「どれだけ自分たちが上に行きたいかの勝負」
前田大然とは、気持ちよかったよね、と声を掛け合ったのだという。J1第24節の大分トリニータ戦、75分に横浜F・マリノスが奪ったこの日4点目を、水沼宏太は「すべてがパーフェクトだった」と胸を張った。
自陣右サイドの深い位置から水沼が一度チアゴ・マルティンスに戻してから相手を外して受け直し、前を向くと、前田が走っていた。相手の守備ラインの裏側に広がる大きなスペースに水沼が柔らかな浮き球のパスを送ると、前田がトラップからものの見事なループシュート。ボールはゴールに吸い込まれるようにしてネットを揺らした。
「(73分にピッチに入って)最初にボールにタッチしたプレーだったと思います。イメージ通りのパスを出せたというか、大然の動きは僕自身もわかっているつもりですし、大然も狙いどころを伝えてくれているので、2人の関係で一本出せばというところに出せました。ワンタッチで相手と入れ替わるボールで、蹴った感覚も良かったので、大然のループも良かったし、全部がパーフェクトだったと思います」
リーグ戦では今季22試合の出場のすべてが途中から。「大前提としてスタメンで出たい」とは選手として当然の思いで、「自分に与えられた仕事がある中で、それを全うしてから自分の色を出さないといけないので、そこの葛藤みたいなのはある」とも打ち明ける。だからこそ、チームの役に立つことを最優先しながら、意識するのは「出場時間数も得点もアシストも足りないので、僕自身のプレーにフォーカスして、それをやることでチームの助けになるので、集中してやりたいと思います」である。
だから、あのアシストは大きかった。
「僕を信頼してくれて走り込んだりスペースを見つけてここにくれというのは、これまでの積み重ねで大然と言い合ってきて、それが点につながって、気持ちよかったねって言い合えました。あいつのやりたい気持ちに応えて、ワンタッチコントロールやループシュートを引き出せたのは、パスの出し手として僕自身も良かったですし、そうやって自分も引き込んでもらうというか引っ張ってもらえたのはチームとして大事なこと。大然の姿勢を見ながら、僕自身も高みを目指してやっていきたいと感じました」
オリンピックで出場機会が少なく4位に終わって、前だが持ち帰った悔しい思いを、水沼がパスで引き出して結果につなげた。お互いを引き立て合う関係は、そのままチーム力の高まりに寄与するだろう。
「ここからの勝負は、自分たちのいままでの戦いを上回るかどうかが大事になってきます。練習からぬるいプレー、ゆるいプレー出たら厳しく言っていくようにしないといけないですし、上を目指すには毎日の積み重ねが大事な時期に差し掛かってきます。自分自身ももう1回、自分の中で落とし込んでやっていかないと。どれだけ自分たちが上に行きたいかの勝負をしていきたいと思っています」
横浜FMが横浜FMを超えるために。首位の川崎フロンターレとは6ポイント差まで詰め寄ったが、「自分にフォーカスする」の気持ちを水沼が忘れることはない。そうすることが、自分たちをチャンピオンに押し上げる術だと知っているからだ。