上写真=20節の名古屋戦の鮮烈ボレーで月間ベストゴールを受賞した酒井宣福(写真◎J.LEAGUE)
打った次の瞬間、入ったと思った
――7月のJリーグKONAMI月間MVPと月間ベストゴールのダブル受賞、おめでとうございます。
酒井 ありがとうございます。KONAMI月間MVPのトロフィーが立派なので驚きました。月間ベストゴールのカフスとあわせて素晴らしいものをいただけて、うれしいです。選手として、今後もこの名誉に恥じないようなプレーをしなければいけないと感じます。
――ここではベストゴールについて伺っていきたいと思います。名古屋戦で決めたゴールを振り返ってください。MF中野嘉大選手の横パスが流れ、MF樋口雄太選手に渡ろうというところで、ゴール前のスペースに走り込みました。
酒井 最初に嘉大が前向きでボールを持った瞬間、パスが出てくるかなと思って動き出しました。そこでは出てきませんでしたが、ルーズボールになった瞬間、雄太がパッと顔を上げて、こちらを見てくれたんです。その瞬間に『絶対に来る』と思って、一つ動き直してから、ここにくれ、という感じで走りました。
――樋口選手とは目が合ったのですか?
酒井 合ったと思っています。向こうは違うと言うかもしれませんが(笑)。
――回転しながら体の向きを作り、スペースに走り出す動きが、とてもスムーズでした。
酒井 シュート練習から、常にあのような動きをやっているので、日々の積み重ねが出たと思います。雄太のところにボールが行った時点で、絶対にパスが出てくると思いましたが、どんな軌道のパスが来るか分からないので、すべての軌道に対応できるような体の向きにしておきました。
――浮き球のパスを左足ボレーで合わせました。
酒井 ゴールキーパーは、まだシュートを打たないと思っているだろうと感じました。このまま打ったらびっくりすると思って、高いボールが来たタイミングで直感的に、そのままシュートを打とうと思ったんです。体がのけぞって吹かさないように、しっかりミートすることを意識して左足を振って、インステップの内側寄りで捉えました。
――DAZNの映像を見ると、シュートの直前はボールだけを見ています。ゴールの位置は見えていたのですか?
酒井 見えていません。感覚で打ちました。
――ゴールが見えていなくても、シュートは素晴らしいコースに飛びました。
酒井 シュートの感覚がすごく良くて、ボールを見たら、思った通りのコースに飛んでいました。シュートを打った次の瞬間、入ったと思いましたね。
――喜ぶ酒井選手にチームメイトが駆け寄ってきて、スタンドのお客さんも大いに盛り上がりました。喜びの輪の中心にいるのは、ゴールを決めた選手が味わえる特権ですね。
酒井 前半は0-1でしたが、48分に嘉大が同点ゴールを決めて『いくぞ!』という雰囲気になっていました。そういうチームとスタジアムの雰囲気が生み出したゴールでもあると思います。
――パスを出してくれた樋口選手とは試合後、何か話したのですか?
酒井 雄太はいつも僕のことを見てくれているので「ありがとう」と伝えました。偉そうに「俺がアシストをつけてあげたんだよ」とも言いましたけど(笑)。雄太は僕の動き出しを一番よく見てくれている選手なので、感謝しています。
――知り合いからのLINEなども、たくさん来たのではないですか?
酒井 かなりの数の連絡が来ました。びっくりしたのは、アルビレックス新潟時代にチームメイトだった、ガンバ大阪の東口順昭選手から『見てたよ。すごかったね』とLINEが来たこと。そういうLINEが来たのは初めてなので驚きましたし、見てくれていたのが、うれしかったです。
――大宮アルディージャから完全移籍で加入した今季、4月24日の11節までに3得点。10節と11節では2試合連続ゴールを決めていましたが、翌節から5試合戦列を離れ、17節で復帰しました。
酒井 ゴールを決めてきた感覚が残っていたので、離脱している間は、それほど不安は感じませんでした。でも、いざ復帰すると、うまく体が動かなかったり、自分の思うプレーができない違和感があって、試合を重ねるごとに少しずつ不安になっていたんです。
――復帰3試合目の21節・サンフレッチェ広島戦で試合終了直前に同点ゴールを決め、1-1の引き分けに持ち込みました。
酒井 復帰直後から起用してもらい、広島戦もあまりフィーリングは良くなかったのですが、ゴールを決めることができた。あのゴールが自信をよみがえらせてくれて、自分に勢いを与えてくれる1点になりました。
――あのゴールが、次の名古屋戦での左足ボレーにもつながっているのですね。
酒井 そうですね。リラックスして打つことができました。ゴールを決めていないとシュートを打っても、ああいう球筋でボールが飛ぶことは少ないと思うので、前の試合でゴールを決めていたことも、あのボレーが決まった要因の一つだと思います。