上写真=9日の名古屋戦でJリーグデビューを飾り無失点勝利に貢献したガブリエウ(写真◎J.LEAGUE)
どこまでも真剣な受け答え
画面の向こう側で報道陣の前に姿を現したときから、試合に臨むかのようだった。子どもの頃からセンターバック(CB)一筋というブラジル人DFは、ピンと伸ばした背筋が揺らがない。まるで真剣勝負といった様子で、メディアの問いに答えていく。
自分の長所については、「ビルドアップとパスの精度。スピードを持って走れること。それらを日々向上させるために、トレーニングに取り組んでいる」。あえて改善したい点を聞かれれば、「それはない」と表情を変えずに語り続けた。
加入後、即出場したリーグ再開初戦の名古屋グランパス戦では、J1残留のためにも大きな勝ち点3の獲得に貢献。しかも、守備陣としてはうれしい完封勝利だったが、「DFだけで守るのではなく、前線のプレッシャーから守備が始まっていると認識している。前線の選手のハードワーク、ボールを追いかける姿勢、それに連動して中盤、さらに最終ラインが動く。そういった組織としての守備があったからこそ無失点に抑えられたと思う」とチームとしての成果であることを強調。やはり、表情が緩むことはなかった。
そんな助っ人DFが感謝したのが、日本に入った後のバブル方式での隔離期間中のクラブの対応だった。日本デビュー戦での完封勝利について、「そこに来るまでにチーム、関係者、フロントなどの尽力があったからこそ、僕らのピッチのパフォーマンスにつながったと思う」とガブリエウ。チーム関係者は隔離期間中のガブリエウと毎日ミーティングを行ない、他愛のない日常会話でリラックスさせながら、チームのゲームモデルや練習について説明を続けたという。
「毎日自分たちのことを気にかけてくれているチーム関係者の姿勢を見て、本当に自分たちは手厚く迎えられていると認識した。そういった支えてくれる人々のためにも、与えられた環境で日々努力して最大のパフォーマンスでチームに合流することを目標に、毎日与えられた1時間のトレーニングで最善を尽くすように努力した」。ガブリエウの真摯な姿勢は、チームへの恩返しの気持ちの表れであるのかもしれない。
近年の日本の過酷なまでの暑さには、「試合の日の台風の風には驚いたが、両方のチームにとって同じ条件」と言い訳はしない。今後のキャリアパスについても、「可能ならば横浜FCでキャリアを積んで、プレーし続けることが目標」と優等生の返答を返すが、社交辞令には聞こえない。取材者の感謝の言葉には、「ドウイタシマシテ」と日本語で返す。
どこまでも隙がない。浮上を目指す横浜FCにとって、これ以上ない鉄壁のDFは取材の最後の最後、席を立つ直前、少しだけ笑みを浮かべた。次はきっと、勝利した試合の後に笑顔を見せることだろう。
取材◎杉山 孝