上写真=ACL優勝へ向けて、鬼木達監督はまずはグループステージ突破の自信を語る(写真◎スクリーンショット)
「自分たちの戦いたい形にならなかったとしても」
川崎フロンターレが9度目のAFCチャンピオンズリーグに挑む。過去8回で最高は、3度のベスト8。今回はもちろんそこを一気に飛び越えて、チャンピオンの座につくことがミッションだ。
鬼木達監督も6月27日から始まるグループステージへ向けて、徐々に高めている真っ最中。
「注目を集めていると思いますし、アジアの舞台でどれだけできるか自分たちに期待しています。チームがもう一段上に行くために必要なタイトルです。みんなで全力で戦いたい」
ただ、今回はあまりにも条件がハードだ。慣れない国、ウズベキスタンでの集中開催。コロナ禍における厳しい行動制限。中2日で6試合をこなす超過密スケジュール。登録選手全員を伴って、開催地に向かうことになった。大胆と慎重のバランスが難しくなりそうだ。
「映像で見る相手と実際に戦う感覚はなんとなく違いがあるというか、映像で見ているよりもすごくタイトだったり体が大きかったり選手が圧を感じていたり、そういったギャップはこれまでのACLを戦いながら感じているので、油断とかスキは自分の中でなくなってきています」
過去の経験を生かすときが来たのだ。
「相手がどういう形で来られたら嫌なのかはイメージがあるので、あとはそれを出せるかですね」
詳細な情報の分析を前に、鬼木監督の中のイメージはふくらんでいる。相手を見て、嫌がることをする。ここまで培ってきた作業を、ベンチもピッチもさらに研ぎ澄ませていく。
「自分たちの戦いたい形にならなかったとしても」
…と、ここまでなら通常のチームの組み立て方。今回は川崎Fが所属するグループIだけではなく、ガンバ大阪が戦うグループHもウズベキスタンで戦い、どちらのグループもロコモティフ・スタジアムとブニョドコル・スタジアムを使用することになっている。ピッチは想像をはるかに超えて荒れることになりそうだ。
だから、今回は特に「プランB」に意識を向ける。
「仮に自分たちの戦いたい形にならなかったとしても、どうやって勝ちに持っていけるかを共有したいと思います」
サンプルにするつもりなのが、直近のゲームだ。6月9日の天皇杯2回戦でJ3のAC長野パルセイロに先制され、攻めても攻めてもゴールが割れず、ようやく追いついたのは90+1分のこと。延長戦でスコアは動かず、PK戦の末にほうほうの体で逃げ切った。
「ACLに行く前に難しい戦いをすることができて、PK戦でも勝てたことはすごくポジティブにとらえています。あのゲームも、自分が見てきた映像とは全然違ったサッカーで、彼らのなりふり構わずやってやろう、というものがあふれ出たゲームでした。予想と違う形になったときに冷静にどれだけできるか。分析はしてもその通りにいくとは限らないので、そこで何ができるか。勉強になりました。ああいう戦いをやらせてもらえてよかったと思います」
アジアでの難しい戦いの前のシミュレーション、と言ってしまえば、長野の選手たちに失礼かもしれない。だが、結果的にジャイアントキリングを狙った彼らの本気が川崎Fの選手たちにもたらした刺激は大きい。「日本を代表して戦う」と鬼木監督が強調するのは、こうやってライバルから授かった経験を携えて戦う意味もあるだろう。
「全員がしっかりやれば自ずと結果はついてくると思っていますし、自分たちの自信や強気な姿勢を出すことがこの大会の勝利に近づくと思っています。強い意志を持って、特に外国のチームと戦うときは土俵にしっかり立つことが大事だと持っています。自信を持って戦いたい」
さあ、「9度目の正直」へ。決意がみなぎる。