上写真=波多野豪が自らのプレーで信頼を取り戻し、ファン・サポーターを笑顔にすることを誓う(写真提供◎FC東京)
「これからも信頼を取り戻せるような結果を」
FC東京の6月は最悪のスタートだった。5日のルヴァンカッププレーオフステージ第1戦で、湘南ベルマーレにアウェーゴールをたたき込まれて0-1の黒星。9日の天皇杯2回戦では順天堂大にまさかの1-2でノックアウトされた。そして、13日である。ルヴァンカッププレーオフステージ第2戦で2得点以上で勝たなければ、連覇が消える。
レアンドロ、ディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトン、アダイウトン。ブラジル人トリオが爆発して計4ゴール、失点を1に抑えて、逆転でプライムステージ突破を決めてみせた。
だが、GKの波多野豪はすべてに納得したわけではない。1失点の悔しさがのしかかる。
「まずは絶対に勝たなければいけない試合でした。勝利を目指して戦って得点も取って自分もセーブすることもできました。でも失点してしまって、ああいう場面でもしっかり止めないといけないと思いますし、味方が必死にシュートブロックをしてくれているのだから、僕も飛んできたボールに食らいつかないと」
ゴールキーパーとしては、勝利を喜びながらも44分に3-1とされたミドルシュートからの失点を見つめ直すのだった。
3月、安部柊斗とともに謹慎処分を受けた。新型コロナウイルス感染防止対策に取り組むクラブの規則を破って、18日夜に会食に出かけていたのだ。そのため、21日のJ1第6節ベガルタ仙台戦はベンチ外、その後4試合はベンチに座ったが、復帰は4月24日の第11節、サガン鳥栖戦まで待たなければならなかった。オリンピック代表候補の最終選考の場となるU-24日本代表の6月の活動にも呼ばれなかった。
「とても悔しい思いもしましたし、後悔していて。でも、ずっと落ち込んでいてもレベルアップできないし、評価もされないので、高いモチベーションでプレーしながら、自分の考え方を変えながら取り組んでいます。いま、コンディションは上がってきているので、楽しんでいけたらと思っています」
鳥栖戦ではまず、アップするためにピッチに出ていくときにサポーターに頭を下げた。
「ユニフォームを掲げてくれたり、胸に手を当てて拍手してしてくれた方たちを見ると、申し訳ないことをしてしまった、信頼を裏切ることしてしまったと思って、表現できることはあるかと考えてお辞儀をさせてもらいました。これからも信頼を取り戻せるような結果を出して、表現していければと思っています」
ピッチの外でも自己変革に取り組んでいるという。
「読書を始めました。影響されやすいのでいろんな方の本を読んで学んでいます。稲盛和夫さんの『考え方』という本はグッと来るものがありました」
チームメートの児玉剛に読書を勧められ、見つけた一冊。サブタイトルには「人生・仕事の結果が変わる」とある。京セラ名誉会長の人生訓に触れて、考えを深めた。
「サッカー選手である以前に、一人の大人として、人間として成長していければ、もっともっといいパフォーマンスを見せることができますし、違う世界観が見えてくると思います」
「考え方が変わって生活も変わってきています。もうFC東京の名前、ブランドを傷つけたりしたくはありません。ファンの皆さんの苦しんでいる顔は見たくないので、笑顔にしていきたい。だから、自分の行動をもう1回改めていきたいと思います」
自分が変わったかどうかは、試合で見せるしかない。6月19日の第18節、アウェーの横浜FC戦が次の機会だ。
「僕はゴールキーパーなので点を取らせないのが仕事です。味方と協力しながら、いい準備をしながら、前回はブラインドになっていて決められましたけど、今日もそこに取り組んで少しは改善できています。最善を尽くしてゴールを死守したいですし、いまチームで得点が取れているので、フォワードの選手が気持ちよく攻撃できるようにしっかり守りたいと思います」
応援する人たちも、明るい波多野の悲しい顔はもう見たくないだろう。大人になった波多野が、ゴールとファン・サポーターの笑顔を守り抜く。