上写真=脇坂泰斗はFC東京戦では70分から登場。このFKでチームの4点目を導いた(写真◎J.LEAGUE)
「止まる判断を心掛けました」
自分たちにフォーカスする。
王者川崎フロンターレの鬼木達監督も選手たちも、同じ言葉を使って意識の統一を図っている。あまりにも強すぎる川崎Fを前に対戦相手が特別な対策を施してきても、自分たちが自分たちのやるべきことをするだけである、と。
ただもちろん勝負事だから、対戦相手の情報を整理しないわけはない。例えば、サガン鳥栖もFC東京も、それまでとは異なる形で最終ラインの前にボランチを2枚並べる形で向かってきた。あくまでも形の上では、だが、川崎Fのインサイドハーフ2枚と対峙する格好になる。
そのインサイドハーフの一人、脇坂泰斗は〈対策への対策〉を「具体的には言えないです。すみません」と笑いながら、さすがに明かそうとはしない。
ただ、ヒントの種のようなものは残していった。
「相手が2ボランチだったら、こっちはアンカーとインサイドハーフで3人なので、3対2の局面を利用していくべきだと思います。それぐらいしか言えないですけど」
数的優位を作り続ける、というシンプルだが奥深いアクションが解の一つになりそうだ。とはいえ、詳細が明かされない分、試合を見る私たちの読み解く楽しみが増えるというものだ。
脇坂はそのFC東京戦では70分からの途中出場。心掛けたのは「止まること」だった。
「途中から入ってもやることは変わらないんですけど、勝っている状態(3-1)だったので、落ち着かせるところを意識しました。行くところと行かないところで、止まる判断を心掛けました」
多摩川クラシコという特別なゲームで2点をリードして残りおよそ20分。お互いの疲労と集中力のバランスを察知しながらゲームを回していくためには、何でもかんでも攻めればいいというわけではない。こんな脇坂のような気の利いたバランサーを配することができるのも、川崎Fが強い理由だろう。
次の相手はアビスパ福岡。智将・長谷部茂利監督が仕込んだタイトな守備が売りだ。
「対策されるのは承知の上です。そういった相手に打ち勝っていくのがチャンピオンチームですから、どんどんそういうチームを打ち破りたいと思っています」
言葉から王者の自覚とプライドがこぼれてくる。その強い思いをプレーで表現し続けるからこそ、本物になれるのだ。