「動きと練習してきたクロスが両方合った」
山根視来は川崎フロンターレで2年目のシーズンを楽しんでいる。個人の目標には「得点とアシストで合わせて10」を設定した。「数字を残すことでいろいろな人の目に留まるから」だ。自己表現としての10ポイント。
2月20日のFUJI XEROX SUPER CUP 2021、ガンバ大阪戦ではミドルシュートを三笘薫がコースを変えて決めたので、これもアシスト。リーグ戦ではないので目標の数字にはカウントしないとしても、開幕戦の横浜F・マリノス戦、続くセレッソ大阪戦で2戦3アシストだ。
どれもため息ものだった。
一つ目は横浜FM戦の21分、家長昭博のゴールを演出した。ニアゾーンに走り込んで脇坂泰斗から浮き球でもらい、右足のジャンピングヒールパスでアクロバティックに背中側に戻したノールックパスだ。
「ヤス(脇坂)と(田中)碧で時間を作っているときに真ん中に大きいスペースが見えたんです。タイミングを見ながら入っていったらアキさん(家長)と動きがかぶったんですけど、自分が行くと判断したときに(家長が)止まってくれたのが見えて、相手も自分に食いついてきた感じが見えたので、あとは感覚でしたけど、アキさんがいると思って出しました」
C大阪戦では2度のビハインドを追いつく2アシスト。どちらも右サイド深くを攻略したもので、7分には鋭くボールに回転を与えたシュートのような高速のセンタリングでレアンドロ・ダミアンの豪快ボレーを導き、47分には正反対にチップキック気味で緩やかなループパスを送ってまたもやレアンドロ・ダミアンの頭に合わせた。
「1点目は味方のボールの持ち方や関わり方で自分のポジションを空けておいて、アキさんからヤスに入る瞬間に、僕が前に行けば丸橋(祐介)選手が困るかなと思ったので少しポジションを上げたら、そこにヤスが出してくれました。相手のセンターバックの選手よりたぶんダミアンの方が強いと試合前から思っていて、あの試合に限ってはクロスをシンプルに上げていいのではという声も(鬼木達)監督から出ていましたし、僕もそう思っていました。(0-1で)負けていましたし、一回ダミアンに入れてみようと。素晴らしいボレーで決めてくれてダミアンに感謝したいです」
「2点目はサイドチェンジがすごく効くだろうとハーフタイムにみんなで意思疎通できていたし、一発、局面を変えるのもありだという話でした。アキさんが深い位置までいってもらったのでサポートしようと思ったんですけど、僕を飛ばして碧に出した瞬間に僕のマークがそのまま碧に食いついたので、前のスペースが空いているのが見えて走りました。碧はたぶん最初はクロスを上げようとしてたんですけど、僕の動きが見えて優しいボールを落としてくれました。ああいうボール(ループパス)を上げるときは、さっきも言いましたけどダミアンはだいたい勝ちますからね。動きと練習してきたクロスが両方合ったいいプレーだったと思います」
本人の「解説」をかみしめるほどに、味わい深さが増す川崎Fの攻撃と山根のセンス。「(アシストの数が)ハイペースでいつ失速するか怖い」と笑うが、それも練習で得た自信の裏返し。
「クロスをほとんど上げたことがなくて、ロングボールの蹴り方と違うし、高すぎても低すぎてもダメ。簡単そうで難しい技術なので去年1年間、コーチングスタッフの方と全体練習後に練習しました。蹴り込めばうまくなると言ってもらって、信じていろんな蹴り方をやってきましたけど、ちょっとだけ感覚として自分の中に出来上がってきたというか、そこの感覚はいままでにないものだったので、どんどんこれからも出していきたいと思っています」
「10ポイント」の目標は、早々に上方修正すべきだろう。