上写真=失点減への強い意欲を持って、前川黛也は沖縄キャンプを過ごしてきた(写真◎VISSEL KOBE)
「細かいところに目を向けて」
AFCチャンピオンズリーグのベスト4で散ったからこそ、その先へ、の思いが強まる。ヴィッセル神戸の視線はアジアのてっぺんを見据えているが、2021年のJ1リーグで上位に入って出場権を獲得しなければならない。
そのためには、まず守備、というのがスタート地点。昨季59失点の現実を直視して、三浦淳寛監督が掲げたのが1試合1失点未満だ。最後の砦であるGKにとっては心が奮い立つ目標である。
「失点については、まず僕自身がキーパーとして減らさないといけないと思います」
前川黛也の2020年はJ1でキャリアハイの15試合に出場したものの、失点は24。GKだけが失点の責を負うわけではないが、まずは矢印を自分に向けてトレーニングに励んできた。
ACLでは7試合中5試合に出場、特にラウンド16、準々決勝、準決勝とシビアな決勝トーナメントはすべてゴールを守ってきた。その自信を胸に、今季も飯倉大樹とのハイレベルなポジション争いが繰り広げられそうだ。
「レベルの高い飯倉選手との競争は難しいですが、プロである以上、開幕から出る気持ちで臨んでいます。しっかり開幕から出られるように切磋琢磨して競争に打ち勝っていけるように努力して、継続していきたいです」
魅力は何と言っても、191センチの長身を生かして繰り出す驚きのビッグセーブ。
「もちろんキーパーといったら失点しないことが一番の仕事ですから、失点しないためのセービング能力は強いと思っています。そこを生かしてチームに貢献していきたい」
個人の強みをより生かすためには、やはりチームとしてのディフェンスが必要だ。沖縄キャンプでは三浦監督の下で守備の組織づくりに力を注いだ。
「まずはボールを奪うことが目的なので、一人がコーチングするのではなくて全員がコーチングして、どこからはめてどこで奪うのかの意識を全員で持つ必要があります。そこはキャンプで意識づけできたので、いい守備の強化につながったと思っています」
これまでは残念ながらその精度に難を抱えていた。
「いままでは結構ざっくりのところもありましたが、細かいところ、ただ奪いにいこうというのではなくて、こういうふうに来ていればこういう切り方をしよう、とか、こういうときはスライドを速くしよう、といったように細かいところに目を向けてやっています。チームとして試合に向けて完成度を上げていきたいと思います」
細部における確認を繰り返して、その先に見えるのは、オートマティズム。
「いまは意識してやっている段階ですが、それが無意識になってくれば守備は強くなると思っています」
前川と選手たちが意識の外で自在に守備のオーガナイズを操ることができるようになれば、神戸のゴール前に鉄壁が築き上げられる。