上写真=初々しさと堂々の姿勢が同居する田邉秀斗。川崎Fの未来を担うサイドバックだ(写真◎KAWASAKI FRONTALE)
「鬼木監督にも褒めてもらって自信になりました」
プロとして初めてのキャンプで必死に食らいつこうとしている。静岡学園高から加わったDF田邉秀斗は2002年生まれの18歳。プロの世界で、しかもチャンピオンチームである川崎フロンターレでの日々は刺激でいっぱいだ。
「どういう戦術であろうと、川崎では最低限の技術がないと順応できない、というか、練習に取り組めません。技術は自分に足りないので、自主練をやっていこうと思います」
「川崎の練習が本当に癖のあるというか、パスやトラップの基礎ができた上で応用のような形の練習をするので、そこは頭を使ったりする面でまだ慣れません。体だけではなくて頭が疲れますね」
止める蹴るという基本中の基本を究極のレベルまでに磨き上げ、他クラブの猛者たちも軽々といなしてしまう技術のフットボールだ。徹底的にドリブルを練習してテクニックを身につけることに定評のある静岡学園高出身。高校2年時には全国高校選手権で優勝の原動力にもなった。それでも、うまい、というぐらいのレベルでは通用しない。はるか彼方の境地に達している先輩たちの中に入れば、練習にすら取り組めないという危機感に襲われるのだ。
ただ、それでビビっているような小心者でもない。
「バックの選手なので、ボールロストしてしまうと失点に一番近いポジションですから、相手がどこからプレスを掛けてくるのかは意識しています。試合形式の練習では(プレスを)はがすことができていたので、鬼木監督の要求に近いプレーができたと思っています」
「いい形で持てば、どんな相手がプレスを掛けてきても1枚ははがせるところを、鬼木監督にも褒めてもらって自信になりました」
小さな刺激をはるかに大きな自信に変えてしまえる年頃だ。遠慮している姿は見たくない。
「いまサイドバックを主戦場としているので、山根視来さんを練習の中で注目して見ています。オーバーラップのタイミングは、そこで出るのか、というところで出ているので、盗めるところは盗もうと思っています。サイドハーフとの連係も大事なので、サイドハーフの先輩とコミュニケーションを取っていきたいと思います」
まさにこの「タイミング」というのがキーワードになりそうで、なぜなら高校時代の課題だと認識していたから。いわば一つの「正解」が目の前にあるわけで、これを自分のものにしなければウソだ。
「これまではタイミングは意識せずに、足のスピードでカバーしちゃっていました。いまプロのレベルに入ってみて、よーいどん、で出ると守備の技術が高校のレベルと違いますから、考えてから出たらもう遅いんです。もう一個前でという考えを持って走れていないです」
山根との、プロとの差はそこにあると気づいた。
体調に気を配り、十分な睡眠を心がけ、新陳代謝を活性化させるために水をたくさん摂取するように意識づけ、パスとトラップの自主練習に励むプロ1年目の最初の一歩。
「まだ目標を実現できるレベルにはありませんが、1秒でも1分でも公式戦に絡めるように頑張っていきたいと思っています」
そのために、今日の練習でもまた、一歩成長しているはずだ。