上写真=新加入の前嶋聰志ヘッドコーチ(左)と。柏時代の盟友とともに、下平隆宏監督は選手のマネジメントにも気を配る(写真◎YOKOHAMA FC)
「選手の意見を聞いたり、平等な競争をさせたり」
横浜FCの今季初の対外試合は、30分×4本マッチ。勝敗もスコアも出場メンバーも非公表となっているが、下平隆宏監督によれば「2チームに分けて一人60分、プレーしました。中には30分だけの選手もいましたが」とのことだった。
気になる内容については、再び下平監督の言葉を借りるとこうだ。
「チャンスは多く作れて、点数も何点かは入りましたけど、もうちょっと取れたんじゃないかな。決められるチャンスはかなりあったんですよね。ただフォワードの選手たちは良いコンビネーションやポストプレー、動き出しを含めてクオリティーが上がっている印象ですね」
1月28日の会見ではトレーニングでのFWのレベルの高さに驚いたことを明かしていたが、実戦でもその印象は変わらなかった。
FWの一人、カズもプレーしたという。
「しっかりプレーしました。フォワードのポジション争いは厳しいですが、良いアピールをしてくれたのではないかと思っています」
キャンプを通して選手の特徴や組み合わせの見極めを行っていくが、昨年からの変化も組み込んでいくつもりだ。
「今季に関しては新しい選手が加わったことで、攻撃のバリエーションが増えています。そういうところは大きく変わっていくのかな。収まりのいい選手が多いので、どんどん供給していくようになると思います。昨年は相手の攻撃の回数を減らすためにバックパスを使ったりキーパーを使ったりしてきましたが、今年は前線に起点があるので、そこに入れていくことにトライしていきたい」
一度、相手のリズムを分断するために、GKまで戻してテンポを整えることも意識的に戦術に組み込んできた。だが今年は、代わりに前方向へのパスが増えていくという。ということは、より相手ゴール前で迫力のあるアクションが楽しめそうだ。
「例えばクレーベは、ポストプレーが上手でヘッドが強いイメージで、そういう特徴をリクエストして来てもらった選手です。確かにヘッドは強いしポストになって周りをうまく使えます。そこにプラスして、背後への動き出しもうまいな、そういう武器もあるんだなと。人間性も良くて、ほかの日本人からもリスペクトされているので、そういうところも大きいですね」
新加入選手を手元で見ることで、新しい発見もある。その喜びをピッチに送り出すのも、監督の役目だ。オフに他のJクラブの監督と意見交換をして、選手マネジメントについての気づきを得た。
「昨季の反省を踏まえて戦術的なことではだいぶ浸透してきましたが、当然勝つことを考えたとき、戦術だけでは勝てません。最終的には選手がピッチ上で気持ちよくプレーしなければならないんです」
そのために心がけるのが、適切な気遣い。
「選手の意見を聞いたり、平等な競争をさせたり、もちろんこれまでも意識してきたつもりですが、まだまだもっとできることがあるんじゃないかと感じていて、より選手の細かいところまで、心理的なところまで見て、メンバーを選びたいと思います」
昨季、ファン・サポーターを喜ばせたボールとともに戦うスタイルに、今度はより選手の機微を加えていく。チームの成長は、選手の努力だけで達成するわけではない。下平監督自身が手に入れたマネジメント術が、さらなるプラスアルファを生んでいく。