上写真=優勝して「うれしいの一言」と森重真人は語った(写真◎Getty Images)
今まで本質的な部分が足りなかった
今回のルヴァンカップ優勝は、チームにとって2011年の天皇杯以来のタイトルだった。森重にとっても、9年ぶりの戴冠。表彰式後のはじけるような笑顔に、その思いは表れていた。
「うれしいの一言に尽きます。それ以上の言葉は見つからないというか。うれしいというのと、あとはホッとしているというのと。今シーズンはファン、サポーターも試合を見ることができず、自宅で過ごすことが多かったんじゃないかなと思います。その中でも、ずっと応援してくれているファン・サポーターのために、今日こうやってタイトルをプレゼントできたことが何よりもうれしい」
FC東京は優勝を期待されてきた。だが、なかなか結果をつかめなかった。しかし、2018年に長谷川健太監督が就任し、チームは徐々に変化していった。19年には最後は横浜F・マリノスに逆転され2位に終わったが、シーズンのほとんどを首位で過ごすなど、成長を遂げる。リベンジを誓って臨んだ2020年シーズンはACLに出場することもあって、ただでさえ厳しい日程がより過密になった。結局6位に順位を下げることになってしまったが、最後に結果を手にすることになった。
やって来たことは間違いなかった。今回の優勝は、その証明にもなっただろう。長谷川監督の就任でチームは確実に変わった。
「まず、勝ちたいという気持ち。戦術の部分や技術的な部分だったりもありますけど、サッカーをやるうえで、本質的な部分です。そこがFC東京に今まで足りない部分だったので、そういうところを口酸っぱく、ほぼ毎日のように健太さんは口にしていたので。そういうところがFC東京がタイトル争いできている要因かなと思います」
本質的な部分が変わったと森重は言った。その中で、今季は過密日程の影響によって出番を得た若手が大きく成長したことも大きかったという。
「若手が結果を出すときもあれば、出ないときもありましたが、ACLをその中で戦って、僕らベテランもそうですが、そこで若手が得たことはすごく大きかったんじゃないかなと感じます。カタールから帰ってきてからのJリーグやきょうルヴァンの決勝を戦ってみて、感じました」
ピッチで戦うことを求める指揮官のもとで、チームは勝利にどん欲になった。そして、若手が成長した。さらに、森重自身も新境地をひらく。この日はACLからプレーしているアンカーを務め、柏が誇るアタック陣、オルンガ、クリスティアーノ、江坂任の封じ込めに尽力した。
「まずはオルンガ選手をフリーにさせないというところと、そこに配球するクリスティアーノ選手と江坂選手という、この3人がキーマンになると思っていました。自分たちが攻めているときのリスク管理だったり、カウンターのケアだったりというところで、ジョアン(・オマリ)と(渡辺)剛と、自分と真ん中の3人でコミュニケーションを取りながら、うまく封じられたかなと思う。良い試合だったと思います」
チームも、自身の成長も確認できた2020年は、優勝という最高のフィナーレを迎えた。
「昨シーズン、リーグ戦で最後にああやって、優勝を逃してしまった。(監督は)チームのためにあれだけ情熱を注いでやってくれていますし、その期待に応えたいという思いがずっとあったので、そういう意味では一つタイトルを健太さんにプレゼントできたというのは、個人的にもチームにとっても、もちろん健太さんにとってもよかったと思います」
試合後の会見で指揮官への思いを問われた森重は、改めて感謝の言葉を口にした。