川崎フロンターレの鬼木達監督がサガン鳥栖戦を前にオンラインで取材に応じた。すでに優勝を決め、次々とシーズン記録を塗り替えているが、チームは今もって挑戦者であり続けている。その原動力とは何なのか。答えが指揮官の言葉の中にあった。

上写真=大島僚太に指示を出す鬼木達監督(写真◎Getty Images)

最多得点記録更新まであと3点

 川崎フロンターレは優勝してもなお、挑戦者であり続けている。チームとして、さらなる向上を目指しているという意味においても、目に見える記録の更新を目指しているという点でも。

 今節の鳥栖戦には、優勝チームとして初めて全チームから勝利を挙げるという記録がかかるが、とりわけチームとして意識しているのが、シーズン総得点の更新だ。J1が18チーム制になって以降の最多記録は「84」で、2006年シーズンに記録されたもの。しかもそれは、他ならぬ川崎Fが樹立している。ジュニーニョ(20点)や我那覇和樹(18点)を擁し、圧倒的な攻撃力を誇った。

 当時、川崎F所属の現役選手だった鬼木監督が振り返る。

「やっぱり破壊力があるなとは思っていました。今とはまた違う破壊力ですけれども。ただその分、点を取られてもいた。ある意味で面白味があったとは思いますけど、自分たちが今、進んでいる中で言うと、攻撃でも守備でも見せようと考えています。その両方をやってくれている選手には感謝していますし、その両方をやることに意義があるというか。やっぱり、自分たちの記録は自分たちで塗り替えていきたいと思っています」

 現在、川崎Fは31節を終えて「81」得点を挙げている。つまり、あと3点で記録更新だ。そして失点は「27」。2006年シーズンのチームは84得点を記録した一方で失点が「55」もあり、優勝できずに2位に甘んじることとなった。それに比べて、今季は失点も現時点でリーグ最少。得失点差「54」は圧倒的な数字だ。攻守両面で優れているからこそ、史上最速優勝は成し遂げられた。

 最速優勝や最多勝ち点など、すでに打ち立てられた記録や残り3試合で打ち立てられるであろう数々の記録は、不断の努力のたまものだ。前節の清水戦では相手にうまく守られて、前半はビルドアップがスムーズにできなかった。試合間隔が空き、久々に練習時間が取れた今週は、出た課題について徹底的に取り組んだという。

「前節の前半のところの反省点もあるので、そこを意識しながら、ゴールを向かう姿勢というところをトレーニングしました」

「ビルドアップのところだけではないですが、形ではなくて、われわれがどうやってボールを動かしてきたのか。まずは全員がパスを出して動く作業をしっかりやるというところを確認作業でやりました」

「順番としては、まずは技術の部分。それと立ち位置うんぬんではなくて、相手を見ながらどうやってサッカーをやれるか。どうしても人を探してばかりになってしまうので、しっかり相手を見ながら、パスなのか自分で運ぶのかの判断も含めて、後ろの選手もそうだし、前の選手は例えばターンできるんではないかとか、タメを作れるのではないかとかの判断が大事。そういう話をしながら取り組みました」

『敵は己の中にあり』。その姿勢は一貫している。だからこそ向上への欲求が絶えることはない。

「相手が変化してきたときに、自分たちがアジャストさせていくという作業は必要ですが、ただ、そんなに引っ張られずに、むしろ今はまだ自分たちも発展途上なので、自分たちの強みを押し出していけるかということで、この1年はやってきている。まだまだその段階かなと思います」

 相手チームの変化する戦い方について問われた際も、指揮官は、今季から採用している4-3-3のフォーメーションについて触れながら、いかに自分たちの特長を出すかを重視していると語った。相手を見る、というのは、ただ相手に合わせるということではない。相手を見て、いかに自分たちの特長を出していくか考えてプレーするということだ。

「ここ最近の鳥栖の試合を見ると、攻守においてすごくアグレッシブにやっていますし、なおかつ若い選手が思い切ったプレーもしていますし、そういう意味で言うと難しいゲームになるとは思っています。ただ、いつもそうですけども、受け身にならずに自分たちらしいサッカーをしなくてはいけないと思います」

 記録のかかる12日の鳥栖戦についても、鬼木監督はそう話した。乗り越えるべき相手は過去の自分であり、見つめるべきは内なる自分。なぜフロンターレが成長し続け、記録を次々に更新できるのか。その答えが、指揮官の言葉の中にあった。だから王者は、挑戦者であり続けられる。


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