AFCチャンピオンズリーグでクラブ史上初めてのグループステージ(GS)突破を果たした横浜F・マリノス。GS最終戦を残しつつも、一発勝負となるラウンド16への準備も進めなければならない。松原健が仕込もうとする工夫とは?

上写真=一発勝負の決勝トーナメントへ、松原健も準備に余念がない(写真◎Y.F.M)

「継続してできていることがアジアでも通用している」

「自分たちのサッカーを出せば勝つ自信があります」

 横浜F・マリノスのいわば「合言葉」だ。アンジェ・ポステコグルー監督もどの選手も、事あるごとにその言葉を繰り返して信念を貫き、ここまで戦ってきた。相手を困らせるポジションを取りながらパスをつないで相手の穴を突き、選手個々の特徴的なセンスを組み合わせてフィニッシュワークに持ち込む戦いぶりは、見る者を楽しませてきた。

 12月1日の全北(韓国)戦はその魅力がたっぷり詰まった90分だった。もちろん、途中で少し相手の時間帯はあったものの、キックオフから何のためらいもなく攻めに攻めて、ティーラトン、マルコス・ジュニオール、仲川輝人、そしてオウンゴールで4-1の快勝だった。

「複数得点で勝てたことがチームとして一番やりたかったことで、自分たちのサッカーを顕著に出せたと思います」と話す松原健は、この大会がカタールでの集中開催として再開されてから、3試合連続で出場している。横浜FMの「自分たちのサッカー」にあって象徴的に語られるのが、松原のプレーだ。右サイドバックでありながら、ウイングがサイドに高く張るのに合わせて、内側にポジションを取って中盤の選手のように振る舞うことも、役割の一つになっている。

 Jリーグであれば松原のポジショニングによる優位性を消そうと分析して対応してくるチームは多いが、ほとんど初顔合わせとなる国際大会ではこの「秘密」を悟られていない。グループステージのここまでは、それほど消されるような対応にあっていないと感じている。

「正直、そんなに研究されているという感じはなかったと思うんですけど、ここでリーグ戦を突破していってトーナメントに行く中で、間違いなく研究されてくるところだと思います」

 トーナメントは一発勝負だから、スカウティングも含めてますますタイトな戦いになるだろう。

「そこに対してもっと自分自身のクオリティーを上げないといけないですし、対策を練られたときにどう打開していくかは、Jリーグのときもそうですけど課題だと思うので、少ない準備期間の中でやっていければいいと思います」

 その工夫の一つが、「中に入ったり開いたり」だ。

「対策をされてくれば、自分が中に入りすぎずに中盤の選手にスペースを埋めてもらって、そこから組み立てていく方がいいですし、今度はそこに相手が慣れてきたときに一瞬の動きで中に入ることによって状況が変わると思います。その中に入ったり開いたりの状況の変化をうまく織り交ぜていきたいと思います」

 横浜FMのスタイルによって生まれるメリットとして「全体での運動量が多いのと、相手に休むスキを与えないのは、たぶん相手にとって嫌なところだと思います」と実感している。「インプレータイムの時間を長くしようと、ボス(ポステコグルー監督)が就任した2018年からの流れの中で継続してできていることがアジアでも通用している部分かなと思います」と、ここまで積み上げてきた戦い方に、アジアの大会においても改めて自信を深めている。

 アジアの頂点にたどり着くためには、松原のポジショニングが大きなカギを握るかもしれない。


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