上写真=同点弾に吠える宇佐美貴史。シュートのうまさにため息が出る一発だった(写真◎J.LEAGUE)
■2020年11月22日 J1リーグ第28節(@埼スタ:観衆20,288人)
浦和 1-2 G大阪
得点者:(浦)槙野智章
(G)宇佐美貴史、髙尾瑠
「いいチャレンジになると思います」
シュートマスターの一撃に、目が覚めた。
浦和レッズに先制された4分後、ガンバ大阪のエース宇佐美貴史の右足が光を放った。藤春廣輝の左からのクロスがこぼれ、福田湧矢がすかさずシュート、これもDFに当たると宇佐美の足元に。トラップして右前に置き直す高速2タッチから右足をコンパクトに振ると、ていねいに転がしたシュートが槙野智章の股下を抜けてゴール左に突き刺さった。
「展開的にも一発狙いたい思いがありました。なんとしても勝ち点を拾わないといけなかったので、いいところにこぼれてきていいところに打てました」
淡々とゴールを振り返ったのは「個人的に良くはなかったし、チームとしてもほとんど五分五分だった」という反省が先に立つからだろう。しかし、この同点ゴールのシーンは一度右サイドで細かくつなぎながら相手を片側に寄せておいて、山本悠樹ががら空きの左サイドに大きく展開するという組み立てのうまさがポイントになった。81分には左CKから高尾瑠がヘッドで決めたJ1初ゴールが飛び出して逆転するのだが、このCKを獲得したのも川崎修平がカウンターから仕掛けた力強いドリブルがきっかけだった。若手がのびのびプレーする空気感が暫定2位に立つ原動力の一つだろう。
この試合は川崎フロンターレの優勝がかかっていたという点でも注目が集まっていた。前日の11月21日に川崎Fが大分トリニータに黒星。優勝の行方はG大阪に委ねられた。浦和に引き分け以下なら川崎Fがチャンピオンになるという条件で、つまり宇佐美たちは勝つほかなかった。
「川崎のことよりも、目の前の1試合に勝つことしか見ていないので、(優勝決定に関することは)一切考えていませんでした。この試合にただただ勝ちたいだけでした。もちろん、意識しなければいけないのかもしれないけれど、川崎の『か』の字も頭にはなくて、目の前の試合でいっぱいいっぱいですから」
だが、次は強烈に意識する。相手はその川崎Fなのだから。再び勝たなければならない試合。
「目の前でタイトルを取られることほど気分の悪いことはないですね。今日は目の前の試合で勝ってひとまず優勝を止めることできたけれど、次は川崎の選手もホームで決めたいと思っているでしょうし、サポーターの皆さんもホームで優勝を見たいと思っているでしょうから、そこで僕たちが止めることに意味があります。いいチャレンジになると思います」
そう話して、ぐっと唇を結んだ。
写真◎J.LEAGUE