北海道コンサドーレ札幌が12連勝中で首位を独走する川崎フロンターレを敵地で撃破した。前半からアグレッシブに戦い、後半に2ゴールをスコア。2-0で完勝したが、価値ある勝利に大きく貢献したのが荒野拓馬だった。

上写真=快勝に笑顔。2ゴールとも荒野拓馬のプレスがきっかけで、2点目は自ら決めた(写真◎J.LEAGUE)

■2020年11月3日 明治安田生命J1リーグ第26節(@等々力/観衆11,165人)
川崎F 0-2 札幌
得点:(札)アンデルソン・ロペス、荒野拓馬

ハンターであり、フィニッシャー

 この日の札幌は、守備の局面で相手ボールホルダーに対するアプローチが鋭く、ボールを獲り切る覚悟でプレッシャーをかけていた。コースを限定するとか、サイドに人を追いやるといったたぐいのプレスではない。文字通り、ボールを狩る。その強い気持ちが、そのプレーに表れていた。

「ホームでは大敗してしまったのでアウェーではみんなで悔しさを晴らそうと思っていました。前節のガンバ大阪戦も負けていたので、連敗をしないようにここでしっかり『みんなで戦うぞ』という強い気持ちをもって試合に入りました」

 前線でその姿勢を示し続けたのが、荒野だった。前回の川崎Fとの対戦は1-6で完敗(8月15日・10節)。マンツーマンの守備がハマり、前半は素晴らしい内容で互角の勝負を演じたものの、後半に失点を重ねて大敗を喫することになった。この日も前半は出色の出来ばえだったが、あの時と同様にゴールは挙げられず、嫌な記憶がよみがえる展開になった。

 しかし、である。チームは失速しなかった。後半も変わらないペースでアグレッシブに戦う。そして62分。待望のゴールを手にした。荒野のプレスがきっかけだった。

 荒野が田中碧にプレッシャーをかけて、守田英正にボールを下げさせる。そこに待ってましたとばかりに駒井善成が襲い掛かってボールを奪い、アンデルソン・ロペスにつないだ。A・ロペスはそのままエリア内に進入し、左足でシュート。狙い通りにハイプレスからショートカウンターを決めた。

 それだけでは終わらない。その3分後に再び荒野のプレスからゴールを生む。家長昭博から田中にバックパスが出た瞬間を見逃さなかった。荒野とA・ロペスで田中にプレッシャーをかけてボールを奪い取ると、A・ロペスがそのままドリブルで進み、左のドウグラス・オリヴェイラへパス。最後はD・オリヴェイラのグラウンダーの折り返しを荒野が決めた。

 プレスの急先鋒となり、自らゴールも決めた荒野は言った。

「自分の役割は前線からプレスを掛けること。マンツーマンという形をチームとしてやる中で、自分が前線で一番最初にプレスを掛けたり、ボールを奪ってショートカウンターを仕掛けるというところでした。前半から駒井選手、チャナティップと一緒にプレスを掛けてチャンスを作れていた。そこで決められればというところで、後半は得点できて良かったと思います」

 攻撃の局面では前線から後方に下がってビルドアップに加わり、意図的に持ち場を空けることで、川崎Fの守備者を困惑させた。守備では積極果敢なプレスで相手にプレッシャーをかけてパスワークを寸断。獰猛なボールハンターになった。基本ポジションは1トップだが、いわゆる1トップではない。かといって、2列目の選手にスペースを使わせるだけのゼロトップでもない。多様な役割をこなす荒野を前線で起用していることに、ペトロヴィッチ監督の意図がうかがえる。

「あれだけ連勝して、いま首位にいる川崎Fにこういった試合ができるのは自分たちの自信になるとは思いますけど、これを継続しないといけない。まだまだ僕たちは挑戦者のつもりで、こういったアグレッシブな試合を残り試合も続けていきたいと思います」
 
 この勝利は当然ながらチーム全員で勝ち取ったものだが、ハンターでありフィニッシャーにもなった荒野拓馬が果たした役割は極めて大きい。首位チーム撃破の立役者と言っても、異論はないだろう。

取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE


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