上写真=左サイドバックとして攻撃サッカーの一翼を担う登里享平。若手ウイングを気持ちよくプレーさせている(写真◎Getty Images)
納得のいくゲームをする
「中12日」のスケジュールで備える川崎フロンターレは、いよいよリーグ戦の残りが10試合となった。
そんな「ラスト10」の最初の相手はFC東京。「多摩川クラシコ」で争うライバルであり、今季はJリーグYBCルヴァンカップ準決勝で敗れた因縁の相手で、さらには相手はこの試合で引き分け以下ならリーグ優勝の可能性が消滅する崖っぷちの一戦。どちらにとっても「負けたくないゲーム」なのだ。
登里享平もそこは十分意識している。
「鬼木監督もずっと、そういう相手をやっつけて首位に立ち続けようと言ってきました。挑んでくる相手のこともそうですし、ルヴァンカップで負けて3冠と言っていたのにできなくなって悔しい思いをしたこともそう。だから、相手のメンタルを常に上回ってやっていかないといけないですね。選手全員でそこは執着しつつ、強い気持ちを持ちながらできています。だからこそ、相手を上回りたいと思います」
そんな意地と意地のぶつかり合いのようなものは、試合をさらに面白くするスパイスととらえることができる。
「東京はカップ戦のときと同じ出方なのか、それとも従来どおりのサッカーをするのか、すぐに見抜いてどちらでも対応できるようにしたいと思います。すぐ気づかないといけないし、引いてくるならどこで(攻撃の)スピードを上げるのかはすごく大事かなと思います」
もちろん、忘れてはならないのは自分たちの狙いをしっかりと遂行して、勝つことだ。川崎Fは今年、そこに強いこだわりを抱いてきた。相手の出方次第で自分たちの「出力」をうまくコントロールして最適化していくことも、その一つに挙げられるだろう。
「全体の立ち位置やどこのポジションでどの相手を引き出すか、とか、出てこなかったらどう仕掛けていくのか、という部分でコミュニケーションは取れていますし、引いた相手にだったらローテーションの部分が大事になってくると思います。捕まえづらいところに立ってどこで数的優位にするか。それも含めて相手を見ながら判断できればなと思います」
川崎Fにとってのこの中断期間で、相手を崩していく場面での精度をさらに高めるべく、すり合わせをしてきたという。そのポイントの一つが、ローテーション。
4-3-3のシステムでは、左サイドバックの登里は同じサイドのインサイドハーフやウイングとのポジションを頻繁に入れ替えて攻撃を組み立てている。相手にとってはなんともやっかいだが、見ている側からはその絶妙なコンビネーションにワクワクが止まらないのではないか。
「相手のシステムがいろいろある中で、見極めながらできるというのは自分の強みだと思っています。(センターバックの谷口)彰悟からボールを引き出すにしても、相手の目線の変わったところで引き出してみたり、相手のサイドバックやウイングバックがうちのウイングに食いついた瞬間のズレを狙っているところもあります。マークの受け渡しの部分のズレを狙うのはサイドバックにとって大事なので、自分についているマークよりも前の選手を見るようにしています」
あまり話すと守られちゃうかな、と笑いながら気にしつつも、ローテーションのポイントをそう解説した。ファン・サポーターにとってはこれで、登里の動きの意図を思い描きながら見る楽しみが増えるだろう。
「より相手を圧倒して常にいい試合を更新するところにフォーカスして、自分たちの納得のいくゲームをすることに執着できています。1試合1試合という感覚でできていることが、プレッシャーを感じられずにできている理由だと思います」
2020年の川崎Fの素晴らしいフットボールは、あと10試合しか見ることができない。見逃してはいけないだろう。