上写真=先制して雄叫び。豊川雄太は2試合連続ゴールでチームを引っ張る(写真◎Getty Images)
■2020年10月24日 J1リーグ第24節(@埼スタ:観衆12,863人)
浦和 3-1 C大阪
得点者:(浦)興梠慎三、山中亮輔、マルティノス
(C)豊川雄太
「出し手にいっぱいいい選手が揃っています」
7月26日、J1第7節のサガン鳥栖戦以来だから、実に3カ月ぶりの先発出場。豊川雄太はそのチャンスを最大限に生かした。
28分、相手のゴールキックを木本恭生がヘッドで跳ね返し、前線へ送り込む。すかさず走り込んだ豊川は、止めに来た岩波拓也のブロックをうまくすり抜けて前に出て、続けて槙野智章が寄せてきたところで右足を振り抜いた。ていねいにコースを突いたシュートはゴール左に転がり込んだ。アウェーでの貴重な先制ゴール!
「久々の先発でゴールを目標に頑張りました」
負傷もあって長く試合から遠ざかっていたが、これで3試合連続出場。前節の横浜F・マリノス戦では途中出場で2ゴールを決めて4-1の勝利の立役者になった。そしてこの試合で2試合連続弾とノッてきた。
「うまくセカンドボールのところで狙っていたんですけど、2センターバックがいるのは分かっていたし、抜けてからもう一人来たのも分かっていて、冷静にどっちを狙おうかなと思って、しっかり狙って入りました」
「(シュートのイメージは)感覚的なところもありますし、あれはディフェンダーの股を狙ったつもりでした」
奥埜博亮と組む2トップは、ロティーナ監督も試合後に高く評価していた。ともに前線のスペースへ何度でも飛び出していけるスプリント能力とスタミナがあって、前線からのプレスのスイッチ役としても生きるスタイルだ。
このユニットの持ち味が生きたのが、22分のことだった。中盤右でレアンドロ・デサパトが受けたとき、右前の大きなスペースへ豊川が走り出した。デサパトのミドルパスで抜け出すと、そのまま右足で強烈なシュート。奥埜はこぼれ球を狙って飛び込んでいき、GK西川周作がはじいたボールを触ろうというところで槙野のブロックに阻まれた。ゴールにはならなかったが、押し込んで人数をかけて攻めてくる浦和の前向きのパワーをひっくり返す見事なアタックは、この2人ならではだった。
しかし、3ゴールを浴びて1-3で逆転負け。だから豊川は自分のゴールを「勝ちにつなげられなかったので、自分の中では意味のないゴール」と断じたのだ。いくらゴールを重ねても勝たなければ何の価値も持たない。それが豊川の強烈なポリシーだ。
「自分が2点目、3点目を取ってチームを勝たせられるような選手にならなければいけないと思いました」
そのために必要なこともはっきりと見えている。
「シュートは3、4本打ちましたけど(公式記録では3本)、決めきるところは大前提で、あとはもっと打つことですね。それから、出し手に要求すること。コンビネーションの質はもっと高めていかないといけないので」
連係を深めるには時間も必要で、この試合でそのための貴重な73分間を過ごした。
「僕は個人としては下手くそで、セレッソには出し手にいっぱいいい選手が揃っていますから、ゴール前の動き出しを磨くのが大事です」
セカンドボールへの準備を怠らず、素早く反応し、相手の動きを冷静に見極めて、ていねいにフィニッシュ。そんなこの日の「意味のないゴール」には、情報を集めて分析して技術とスピードで昇華させることができる選手だということを、チームメートにはっきり知らしめるという大きな意味があったはずだ。
取材◎平澤大輔 写真◎Getty Images