上写真=齋藤にとっては激しいポジション争いも刺激だ(写真◎Getty Images)
「本当に強いチームはあそこで勝っていく」
齋藤学が自分への不満を隠さない。
「リーグで点が取れていないのを課題として持っています。自分への不満というか、得点への意識、意欲をもっと持つべきです」
まずはノーゴールについて。JリーグYBCルヴァンカップでは1得点を挙げているが、リーグ戦では14試合、543分に出場してゼロだ。
「東京に負けましたからね。リーグ9連勝、ルヴァンカップの神戸戦も入れればさらに勝ち続けているけど、東京戦の1敗はもう一度考えさせられるかなと思っています。本当に強いチームはあそこで勝っていくんです。そういうチームを目指さないと」
ルヴァンカップ準決勝でFC東京に0-2で敗れて、連覇の望みを絶たれた。その悔しさは、リーグで2位以下を勝ち点15も引き離して独走しているチームであっても、まだ登るべき階段があることを教えてくれた。
こうした「自分への不満」がどうも心地よさそうに聞こえるのは、逆説的になるかもしれないがプレーが充実しているからだろう。ゴールを決めていないことについては、そのあとこんな言葉をつないだ。
「でも、使ってもらえているのは守備とか攻撃のスイッチの部分じゃないかな。試合を重ねるごとに、左で持ってポゼッションして相手を左に寄せることもできていると思います。東京戦も前半で交代したけど、自分では悪くないというか時間を重ねれば崩せるイメージがあって、もちろん(三笘)薫のスピードも武器なので納得なんですけど、チームメートのパスのタイミングとか何を思っているのかが分かってきましたから」
FC東京に敗れた悔しさを口にしたあとは、こう続けた。
「でもうちには、出し切ろうという気持ちがありますね、みんなに。最初から出た選手も途中からの選手も、その1試合で出し切ろうとしている。その意識が勝ちにつながっていると思います」
ハイレベルなポジション争いも、「出し切る」意識を後押ししている。
「みんながみんな、いつ自分の席がなくなるかという状況でサッカーをやっています。それが強みなんです。僕もうかうかしていられません。このチームは点を取って内容も突き詰めなきゃいけないのに、自分は点が取れていないので、そこは意識していきたいです。そして、みんなで一丸となってやりたい」
激しく争う。でも一丸となる。一見、相反するような二つの条件を融合できていることが、強さの秘密というわけだ。
だから、同じポジションで戦う若手にも目を配る。
「いろいろと話してますよ。これから苦労していくと思うんでね。目立つようになると特に。でも彼らは淡々とサッカーやっているので、勢いもあるわけだしどんどん伸び伸びやっていけばいい。しゃべってる中身は言えないですけど(笑)」
齋藤ももう30歳だ。年齢でサッカーをするわけではないが、自分の経験を年下の選手に伝える役割も求められてくる。ミスを飲み込んで次につなげる思考を身につけたのも、その意識によるものだろうか。
「サッカーはミスをするスポーツで、ミスがなければ崩せるのは当たり前ですね。それに相手があってのスポーツなわけだから、言い始めたらキリがないかな。ミスに対しての考え方は人それぞれだけど、ラストプレーのシュートとかその手前のファーストタッチを極めていけばいいと思っています」
ミスを悔やむよりも、勝負を決める一瞬の精度を高めていくという意欲。まだまだ背番号19の進化のスピードは衰えないようだ。