今季、絶好調の川崎フロンターレを、JリーグYBCルヴァンカップ準決勝で破ったFC東京。2ゴールを奪ったレアンドロは間違いなく勝利の立役者だ。FKとカウンターで仕留めたゴールは意外性がもたらしたものだった。

上写真=先制のFKは相手の虚を突くキックだった(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月7日 ルヴァンカップ準決勝(@等々力:観衆6,635人)
川崎F 0-2 FC東京
得点:(東)レアンドロ2

「誰のゴールでも良かった」

 欲しくて欲しくてたまらない先制点は、いわば「常識の向こう側」から、その右足とセンスで手に入れた。

 14分のFK。左サイドの深い位置、ほとんど角度のないゴールラインに近い場所だった。誰に合わせてくるか。

 だが、レアンドロには「キーパーを見たときにニアサイドが空いているように見えた」という。だから、中で合わせるという常識とは違う判断で狙った。あとは技術の問題。今季、何度もセットプレーを蹴り込んできた。強すぎず弱すぎず、高すぎず低すぎず、きれいなカーブを描いたパーフェクトなボールがGKの手を弾いてゴールに転がり込んだ。

 序盤で先行したから、川崎フロンターレが攻め続け、FC東京が守り続けると予想された試合展開は、さらにその色を濃くしていった。だが、超集中守備で変幻自在の川崎Fの攻撃に屈しなかったことで、再びチャンスが転がり込んできた。

 62分、中盤でボールを受けた三田啓貴が左前に鋭くスルーパスを送り込んで、永井謙佑の俊足を生かした。抜け出した永井がセンタリング、スピードのあるボールに食らいついて足を伸ばしたレアンドロが押し込んで、2-0とリードを広げたのだ。

「皆さん、ご存知の通り、永井はすごく足が速いですから、勝つと信じていました。だからあのエリアに入りました。本当にいいパスが来て決められてうれしかったですし、永井もいいパスを出せてうれしいはずですよ」

 絶賛するに値するパスだ。一気に左を抜け出したスピードのまま送った左足のパスは、DFもGKも触れない絶妙なコースを滑るようにして届いたのだ。

「誰のゴールでも良かった。みんなで決勝に進みたいと思っていました」

 その「みんなで」の意識は守備により強く出た。長谷川健太監督も「全員が気持ちを前面に出してハードワークした勝利です」とうなずいたが、レアンドロも時には最終ラインの近くまで下がって対応するなど、守備にパワーをかける時間が長くなった。徹底した献身は驚異的だった。

「試合が始まる前からみんなで、一生懸命できるだけのことをやろうと決めていましたので」

 涼しい顔で振り返るのだった。

 鮮烈の2ゴールと守備への真剣さでもぎ取った勝利。さあ、決勝だ。FC東京としては11年ぶりのことになる。昨季はリーグ戦で「2位」だったから、ここで同じ立場になるつもりはない。

「勝ったのはうれしいですが、まだ何も成し遂げていません。次に勝たないと意味がありません」

 あまりにもクールに見据える勝利の立役者。1カ月後の11月7日、柏レイソルとのファイナルでもきっと、常識にとらわれないアタックで勝利を目指すだろう。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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