横浜FCでチーム最多の6点目をマークした大卒ルーキーの松尾佑介は浦和のアカデミー組織出身で仙台大を経て、今季正式に加入したばかり。9月26日の浦和レッズ戦では2ゴールを挙げて、勝利の立役者となった。

上写真=スピードに乗ったドリブルと思い切りのいいシュートで存在感を示した松尾(写真◎J.LEAGUE)

埼スタは特別な場所

 埼玉スタジアムには、幼い頃からレッズを応援するために何度も足を運んできた。小学生の頃に前座試合でピッチに入ったが、それ以来足を踏み入れたことはない。まさに夢の舞台。横浜FCの松尾佑介はしみじみと話す。

「僕にとっては特別な場所です」

 浦和レッズの下部組織で育った22歳の思い入れは相当である。空回りしないように必死に気持ちを抑え、気合を入れて敵地となった大きなスタジアムに乗り込んだ。

 9月26日の浦和戦は、松尾の独壇場だった。0-0で迎えた16分、敵陣ゴール前の左サイドでパスを受けると、細かいタッチで相手DFをずらし、素早く右足を振る。ボールは鋭くカーブし、きれいにファーサイドのゴールネットへ。浦和のベンチ前では大槻毅監督が立ち尽くすなか、ピッチで大きく飛び上がり、右拳を力強く突き上げた。会心の一撃を振り返ると、笑みもこぼれた。

「思い切りの良さがゴールにつながりました。練習からシュートのフィーリングが良かったので」

 厳しく指導された恩師の前だったが、特別な感情はない。いつもと変わらずに平常心を保ち、ゴールに向かい続けた結果である。「少し圧迫感があったくらいです」と冗談を飛ばすくらい心の余裕があった。

 1点リードの35分にも、スルーパスから裏へ抜け出してチャンスをつかんだ。相手GKとの1対1ではうまく駆け引きし、冷静にゴールに流し込む。2点目は派手に喜ぶこともなく、気持ちをすぐに切り替えた。

「喜ばないようにしていました。あそこからレッズの反撃が来ると思ったので」

 ジュニアユースから浦和の下部組織で育ち、ユース時代には大槻監督の指導も受けた。当時は実力が認められず、トップ昇格は見送られた。地元の埼玉県から離れて仙台大に進学し、コツコツと努力して力をつけた。昨年から横浜FCの特別指定選手となり、J2で21試合出場し、6得点を記録。今季から正式に加入し、実質2年目のシーズンは、攻撃の核として活躍している。19試合を消化し、14試合出場で6得点。チーム最多のゴール数をマークしても、"2年目のルーキー"は全く満足していない。

「僕と同じ年の浦和のレオナルドは9点も取っています。負けたくないです。これからもどん欲にゴールに向かっていきます。次も決めたいです。点を取らないと叩かれるくらいの選手になりたい」

 言葉には覚悟がにじむ。この男をエースと呼ばずして、誰をエースと呼べばいいのか。頼もしさは増すばかりだ。

取材◎杉園昌之


This article is a sponsored article by
''.