上写真=2得点を挙げた川崎Fの三笘(写真◎J.LEAGUE)
■2020年9月5日 J1リーグ第14節(観衆4,971人/@日産ス)
横浜FM 1ー3 川崎F
得点:(横)マルコス・ジュニオール
(川)三笘薫2、家長昭博
・横浜FMメンバー◎GK朴一圭、DF小池龍太、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン、MF扇原貴宏(83分:渡辺皓太)、天野純(57分:前田大然)、マルコス・ジュニオール、FW松田詠太郎(57分:仲川輝人)、ジュニオール・サントス(68分:オナイウ阿道)、エリキ(57分:喜田拓也)
・川崎Fメンバー◎GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、ジェジエウ(55分:登里享平)、谷口彰悟、車屋紳太郎、MF守田英正、脇坂泰斗(46分:旗手怜央)、大島僚太(89分:田中碧)、FW家長昭博、レアンドロ・ダミアン(46分:小林悠)、三笘薫(73分:齋藤学)
後半の開始から戦い方を修正した川崎F
意図するハイテンポなサッカーを試合のスタートから実践した横浜FMがいきなり先制点を手に入れた。2分。右サイドで起点を作り、小池の縦パスを受けた松田が右サイドのさらに深いからダイレクトで中央に折り返すと、バイタルエリアでフリーになったマルコス・ジュニオールが右足を一閃。ゴール右隅に決めた。
まだ川崎Fのエンジンがかかる前にホームチームが先制に格好。まさしく狙い通りの展開だった。その後も走力とスプリント、切り替えの早さで優位にゲームを進めていく。しかし、15分過ぎから首位チームがその持ち味を発揮し始めた。
とりわけ目を引いたのが左ワイドに構えて仕掛ける三笘だ。サイドチェンジやスルーパスから1対1を仕掛け、再三ハイラインの裏をうかがって好機を生んだ。徐々に横浜FMを押し込むと、33分に同点ゴールが生まれる。
中央から脇坂が相手最終ラインの裏にスルーパスを通し、左サイドで三笘が反応。ボックスまで戻ってきた相手CBチアゴ・マルチンスとの間合いを図りつつ、右足を振ると、ボールは股の間を抜けてゴール右隅に吸い込まれた。眼前で進路とシュートコースを防いでいたのは、リーグ屈指のCBであるチアゴ・マルチンス。にもかかわらず、大卒ルーキーは落ち着き払ってシュートを決めてみせた。
前半を1-1として迎えた後半、追い付いた川崎Fはさらに勢いを増す。開始からレアンドロ・ダミアンに代えて小林、脇坂に代えて旗手を投入すると、守備の局面で高い位置から相手を捕獲。横浜FMのビルドアップを寸断して、ペースをグッと引き寄せることに成功する。指揮官はその意図を「圧力をかけたかった」と説明したが、見事に狙いがはまった。48分には、谷口の縦パスを三笘がスルー、左サイド深い位置まで進入した大島がボールを引き取ってロークロスを中央に送り、走り込んだ家長が右足をで合わせて勝ち越した。
そして、である。その2分後には再び三笘が輝いた。三笘から右サイドへロングボールを送り、同期の旗手が収める。ボックス右端から旗手が対峙するティーラトンの股間を抜いて速いロークロスを送ると、走り込んだ三笘が左足でプッシュ。この日2点目は貴重な得点になった。「怜央はあそこでボールを持ったら自分の動きを見てくれるので、来ると思っていました」。絶妙のコンビネーションからの追加点だった。
後半途中から豪雨に見舞われたが、川崎Fはその後もペースダウンすることなく、ボールを走らせ、ゴールを目指した。「常に3点以上を狙う」のが今季の川崎Fだが、3点を手にしてもなお、どん欲に攻めた。一方で守備でも集中を切らすことはなく、横浜FMに反撃を許さず。結果、3-1で昨季のJ1王者に完勝した。
昨シーズンのホーム最終戦で1-4と大敗し、チームとしてその悔しさを晴らしたいと臨んだ試合だった。「ただの34分の1の試合ではない」と鬼木達監督も語っていたが、見事な勝利を手にした直後の時点で『シーズンの中の1試合』と、そのとらえ方を変えていた。
「昨年のチャンピオンチームとの試合は大きなもので、(勝利は)自分自身の自信にもつながります。ただ試合というものに対しては熱い思いをぶつけますが、終わったあとは、はっきり言ってしまえば忘れることが大事。いつまでも喜んでいては仕方がないので」
勝った直後に兜(かぶと)の緒を締める厳しさ。試合途中に状況に応じて戦い方を調整する柔軟性と修正力。そして何より途中出場の選手たちもゲームレベルを落とさない層の厚さ。首位フロンターレに死角なし。そのことを強く印象付ける一戦になった。
取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE