上写真=ボールと戯れる三田は楽しそう。攻撃センスをチームに注入する(写真◎FC東京)
「人もボールも動きながら」
「もっと来い!」
ここのところ出番を得るようになってピッチで駆け回る若手選手たちを見て、三田啓貴が感じていることだ。
「戦力の部分で若手が積み上げてきてくれたらチームとしても大きいので、物怖じせずにプレーして突き上げてほしいですね」
ただ、もうすぐ30歳を迎える自身が若手だった頃に比べれば「おとなしいですよ!」と感じているようで、だから「もっと来てほしいですね」と物足りなさも覚えている。それは先輩として受け止める準備ができているというメッセージでもある。
今季は明治安田生命J1リーグで8試合に出場していて先発は5試合。長谷川健太監督は課題と現状について期待を込めてこう評価する。
「インテンシティの部分では、前回の鹿島戦は非常に素晴らしいプレーをしてくれました。そういうプレーを長くやってくれるようになると、出場が増えてくると思います。セットプレーのキッカーということも含めて攻撃で非凡なセンスがあるので、流れの中でのミドルシュートやスルーパスといった、点に絡むプレーに期待しています」
それはもちろん、三田の意欲と同じだ。
「チームのコンセプトとして、前から奪いにいくという守備のことはありながら、自分の良さを出すにはFWと絡んだり、右サイドバックの(中村)拓海や(中村)帆高と絡みながら前進していくことを意識しています」
「最近は4-3-3でやってきて戦術がはまってきています。フリーで受けられるタイミングがあるので、うまくやっていければと思います」
その4-3-3ではインサイドハーフの右が主戦場。右サイドバックとの連係といえば、あのゴールシーンが象徴的だ。8月26日の第26節・鹿島アントラーズ戦、前半アディショナルタイムに、外に開いて受けた三田の内側から中村拓がインナーラップしてくると、寄せてきた相手2人の間を浮き球で通す巧みなパスで裏を取った。中村拓が中央に送ったところで足を伸ばした相手に当たってオウンゴール、貴重な先制点になった。
感覚がぴたりと合ったコンビネーションだが、その中村拓のことは「すごくクレバーな選手」と評価している。「なかなかいないタイプのサイドバックだと思います。攻撃的だしやりやすくて、物怖じしなくやれていますね。自分もその良さを出すために、彼が上がってきてくれたらやりやすい」と話していて、これからも感覚を合わせながら右サイドを攻略していくだろう。
「守備でも攻撃でもアグレッシブなところは東京のサッカーを象徴している部分で、そこをしっかりやりつつ、時間を作ったり、拓海や帆高やFWの選手とのコンビも含めて、人もボールも動きながら良さを出していければと思っています」
JリーグYBCルヴァンカップも準決勝に進出して、過密日程はまだまだ続く。4-3-3システムのカギを握る中盤の一角として、背番号7の攻撃センスはこれからも欠かせない。