明治安田生命J1リーグ第13節で柏レイソルと戦った鹿島アントラーズ。1人少ない相手に苦労したが、最後の最後で逆転する劇的勝利を手にした。2分で2点を奪った土居聖真は、このゴールを「内田(篤人)さんに捧げる」という。

上写真=この雄叫び! 土居聖真が土壇場の2ゴールで勝利をもたらした(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月29日 J1リーグ第13節(@三協F柏:観衆2,728人)
柏 2-3 鹿島
得点:(柏)オルンガ2
(鹿)三竿健斗、土居聖真2

「まとめていく立場にならなければ」

 あっという間の逆転劇だった。

 54分にビッチに登場し、89分と90+1分に電撃的に叩き込んだ2連続ゴールで大逆転勝利をもたらしたのは土居聖真。まさに千両役者だ。

「すぐに内田さんがLINEをくれました。『オレに捧げるゴールをありがとう』って」と笑ったが、引退したばかりの内田篤人にゴールを、そして勝利を捧げようとする思いは人一倍強かった。だからこそ、逆転ゴールのあとにベンチに走っていったのだ。

 1人少ないながら粘って2-1でリードしていた柏レイソルを悲しみの淵に追いやる2ゴールは、偶然の産物ではない。三竿健斗が72分に決めた1点目も含めて、ベンチで柏の弱点を見定めながら、左サイドで優位に立てる状況を把握した結果だった。

「後半から(左サイドバックの)永戸(勝也)がよくフリーで受けていましたし、レイソルさん側からするとちょっとそこを嫌がっているのが交代前から分かっていました。チームの1点目も僕が(永戸から)マイナスでもらってシュートブロックされたこぼれ球を三竿が反応して決めていて、自分が裏に入ったり相手の逆を突く相手の嫌なことを心がけていました」

 チーム2点目、自身の1点目はその流れを汲んで、またもや左サイドから。永戸のニアへのセンタリングを右足で優しく触れるようにして送り込んだ。

「そういうチャンスが何回かあって、次はニアに突っ込んでみようかなというのが頭の中にありました。触るしかできなかったけど、良いコースに入ってくれてよかったです。自分が決められなくてもキーパーが触ったりDFに当たってファーに流れてくれれば、ということも考えながら打ったシュートでした」

 続く逆転弾は、右からの三竿健斗のクロスに合わせたヘディングシュートだ。

「試合の流れの中で健斗と目が合うというか、いまがチャンス、というのが何回かあったんです。なかなか出てこなかったんですけど、唯一出てきたボールがあのクロスでした。ちょうどDFの間でいいポジションに入れたし、いいクロスを上げてくれました。キーパーとぶつかってでも飛び込もうと思っていました」

 そして、このあとベンチに向かってみんなと喜びを分かち合うのだ。

「本当だったらサポーターさんで埋まるはずのゴール裏に行くところですけど、誰もいません。いま徐々にチームの一体感が増していることを感じていて、さらに強く上がっていくためにはもっともっと一致団結しなければと思っていました。内田さんが引退してなおさら僕も、ピッチ内はもちろん、ピッチ外でもやらなければいけないということを考えていますし、気負いすぎてわざとらしくやる必要はないけど、少しずつまとめていく立場にならなければいけません。このゴール、この勝利、それをみんなで喜ぶことは良い循環をもたらすと思ってベンチに走りました」

 どうやら、常勝軍団を率いる新しい真のリーダーが誕生したようだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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