上写真=練習でこの笑顔。いい雰囲気を作って若手をのびのびとプレーさせる(写真◎FC東京)
「新しいものさしが手に入る」
FC東京ではいま、若手選手の成長が著しい。明治安田生命J1リーグは連戦で、JリーグYBCルヴァンカップも準々決勝に進出。これからアジア・チャンピオンズリーグの再開も予定されていて、「著しい」にとどまらずに、少しでも早く「一本立ち」することが求められている。
そんなときには、ベテランの出番だ。若手が少しでも早くチームの力になれるように手助けをする。そのキャリアやプレーの落ち着き、豊富な経験から、ディフェンスリーダーの森重真人はその役にうってつけだろう。
「試合に出るにふさわしい準備ができている選手は、チャンスをもらえます。試合に出たら、これまで得られなかった新しいものさしが手に入るし、スタメン組との距離感を図れると思います。成長のチャンスじゃないかと思っています」
最近では第12節の湘南ベルマーレ戦でDF中村拓海とMF品田愛斗がJ1初先発、第13節の鹿島アントラーズ戦でも中村拓は連続先発し、FW原大智が初先発を飾って、中村拓からの原へのパスが先制点となるオウンゴールを誘発するなど、フレッシュな若手が存在感を示し始めている。
彼らを伸ばすために森重が実践しているサポートとは?
「まずは、彼らが自分のプレーをやってくれ、ということですね。変に萎縮させるのではなくて、積極的なプレーをしたときにもいい声がけをしたいですし、多少ミスしても自分たちがサポートして失点を防いだりボールを奪い返したりしたい。当たり前のことですけど、ネガティブなことではなくてポジティブな声をかけるのが一番かなと思っています」
センターバックというポジション柄、ピッチの上ではまさに「後ろの声は神の声」で、それを精神面にも応用していくという思いだ。だから若手には、変な「うまさ」は必要ないと力説する。
「試合に出ていかないと得られないものはたくさんあるので、こういう(連戦の)中で試合で特徴をどんどん出しながら自分の武器を出してほしいと思いますし、それがチームの武器になればチームも強くなる。だから、変にチームに合わせようとか自分のネガティブな部分を出さないようにうまくやろうというよりは、ポジティブな部分を出してほしい」
要するに、中途半端にカッコつけるな、という意味だ。
「若い奴らが、自分たちが中心にならないと、というぐらいの気持ちを持ってほしい。早く自覚というか『オレたちがベンチにいちゃだめだよな』という雰囲気になればいいと思います」
もちろん、背中を押したあとに、意気軒昂な若手の挑戦を受けて立つのも、森重たちベテランの役割だ。