8月23日、明治安田生命J1リーグは第12節が開催され、鹿島アントラーズはガンバ大阪とカシマスタジアムで対戦。前半早々に先制され、苦しい展開を強いられるも、試合終了直前に同点に追いつく。得点を挙げたのは、内田篤人の隣で成長してきた犬飼智也だった。

上写真=後半のアディショナルタイムに同点ゴールを決めた犬飼智也(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月23日 J1リーグ第12節(@カシマ:観衆4,949人)
鹿島 1-1 G大阪
得点:(鹿)犬飼智也
   (G)小野瀬康介

「残っているメンバーで、タイトルを目指す」

 スコアは0-1のまま、タイムアップへと近づいていた。後半のアディショナルタイムは5分。時計の針が94分を回ったころ、自陣でボールを受けたセンターバックの犬飼智也は、右サイドの内田篤人にボールを預ける。そして、一目散に相手ゴール前へと走っていった。

 内田の右足から逆サイドへと放たれたロングボールを、FW上田綺世が競り、土居聖真が拾い、DF杉岡大暉がMF荒木遼太郎につないだ。荒木は軽やかなボールコントロールですぐさまクロスを上げる体勢に入り、三浦弦太、昌子源、キム・ヨングォンというG大阪の日韓代表3バックの頭上を越えるボールを送った。次の瞬間、自陣から敵陣のペナルティーエリアまで走ってきた犬飼が空高くジャンプし、ヘディングシュートをゴールに沈めた。

 土壇場で1-1の同点に追いつき、試合が終わった。内田篤人の現役最後となる一戦で、敗戦は免れた。しかし、勝利という結果で、有終の美を飾らせることはできなかった。犬飼の表情は、ゴールを決めても笑顔はない。試合後は、言葉を詰まらせた。

「今日は勝ちたかったので…それだけです。立ち上がりに失点して、自分たちで苦しくしてしまった。勝って、(内田に)『お疲れ様』と言いたかったです。本当にいっぱい学んだので、また成長した姿を見せたいと思います」

 犬飼は2018年に鹿島加入。その年の新体制会見には、ドイツから戻ってきた内田とともに出席した。

「世界でずっと戦ってきた経験のある選手と一緒にやれるのは、絶対に自分にとってプラスになります。ポジションはセンターバックとサイドバックで多少は違うけれど、同じディフェンダーですし、学べることはすごく多いと思う。楽しみです」

 それから2年半、犬飼はセンターバックとして、内田の隣で鍛錬を重ねてきた。

「篤人さんはケガで満足に動けていない中でも、チームを見て、(選手)一人ひとりを見て、そのときに必要な言葉をかけたり、プレーでもそうだし、そういうことができる人だった。自分もこれから、気を遣える選手になっていきたい」

 2年前の新体制会見では、「選手みんなが口をそろえて『タイトル』と言えるのはすごいと思った」と、鹿島の印象について話していた犬飼も、今となっては鹿島イズムが浸透している。

「このクラブにいる以上、タイトルを取らないと意味はない。今まで(タイトルを)取ってきた人たちが少しずつ減っていって、自分はこのチームで年齢が上のほうになったので、自分もタイトルを取らせるためのプレーをしなければいけない。残っているメンバーで、タイトルを目指してやっていくだけだと思っています」

 同郷の先輩でもある内田の思いを受け継ぎ、犬飼は新たなディフェンスリーダーとして、深紅のチームを頂点へとけん引していく。

現地取材◎サッカーマガジン編集部 写真◎J.LEAGUE


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