上写真=脇坂が同点ゴールを決めて小林に祝福される。見事なFKだった(写真◎J.LEAGUE)
■2020年8月19日 J1リーグ第11節(@等々力:観衆4,794人)
川崎F 5-2 C大阪
得点:(川)脇坂泰斗、家長昭博、小林悠、三笘薫、レアンドロ・ダミアン
(C)ブルーノ・メンデス、瀬古歩夢
「ボディーブローのように効いてきた」
恐らくほとんどの人が騙されたと思う。特に、セレッソ大阪のGKキム・ジンヒョンは…。
相手のハンドの判定で得たFK。ペナルティーエリアの左角付近にボールをセットすると、ジェジエウと谷口彰悟の長身センターバックコンビもゴール前に上がってくる。さて、どこに合わせるか。
…というふりを、脇坂泰斗はしていた。
「ボールをセットしたときに、キム選手が僕が中に入れるのを狙っている立ち位置でした。それから間接視野でキーパーを見ている間にも少し前に出ていたので、狙おうと思いました。でも、その仕草を出しちゃいけないので、中に合わせるように助走をゆっくりにして、インパクトだけに集中しました」
狙おうと見定めたのは、ニアサイド。確かにキム・ジンヒョンは脇坂が助走を始めたタイミングでも中狙いで足を動かした。演技派キッカーはその裏をかいて、2枚の壁を越す鋭い右足シュートで左下隅を射抜いてみせた。
7分に先制されていて、これが貴重な同点ゴール。終わってみれば5-2の圧勝だったから、脇坂の一撃が大量得点のスタートになった。
この試合でも相変わらず、攻めて守って走り回った。即時奪回をやすやすと実現できるのはこの人の献身があってこそで、守備が攻撃に直結する川崎Fの心臓部である。
「取りに行くときは全員で、引くときは引くというのができたので、守備は狙い通りでした。うまくいかなかったシーンもありましたけど、反省してゲームの中で修正できたので、後半はそれが相手にボディーブローのように効いてきたと思う」
先制されても微塵も焦らないのは、この自信の効果だろう。
これでついに、延長戦を除く単一シーズンの新記録となる10連勝。「勝っても満足しないのがうちの良さ」だと言うから、白星への渇望はまだまだ収まりそうにない。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE