8月16日、明治安田生命J1リーグは第10節が開催され、鹿島アントラーズはヴィッセル神戸と対戦。前後半に2度、追いかける展開を強いられるも、敗色濃厚の後半アディショナルタイムに同点に追いつく。チームを救ったのは、18歳のルーキー、荒木遼太郎だった。

上写真=後半アディショナルタイムにJリーグ初ゴールを決めた荒木遼太郎(写真◎J.LEAGUE)

■2020年8月16日 J1リーグ第10節(@カシマ:観衆4,766人)
鹿島 2-2 神戸
得点:(鹿)エヴェラウド、荒木遼太郎
   (神)ダンクレー、郷家友太

鹿島を敗戦から救った18歳の高卒ルーキー

 後半のアディショナルタイムは、掲示された「4分」を経過しようとしていた。スコアは1-2と、鹿島にとっては「敗色濃厚」の状況。昨季のJ1リーグ・ホーム最終戦、そして記憶に新しい2020年元日の天皇杯決勝と、2度も続けて苦杯をなめさせられた神戸に、この日も終盤までリードを許した。そんな中、救世主が現れる。93分15秒のことだ。

 ペナルティーエリアの外側で相手のクリアボールを拾ったMF荒木遼太郎が、ファン・アラーノへとパスを送る。そのボールはペナルティーエリアの中で待ち構えていたFW染野唯月の元へ。染野はターンして体を内側に向け、ゴール前のスペースへと丁寧にボールを転がし、次の瞬間、走り込んできた荒木が左足でボールをトラップして、右足でゴールへと蹴り込んだ。荒木が自身のJリーグ初ゴールが決め、チームを救った。

「最初、こぼれ球が来たときに、自分でシュートを打とうと思ったけれど、打てなくて、アラーノに(パスを)出しました。そこから染野にボールが渡ったときに、自分の前にスペースがあったので、そこに走り込んだらちょうどボールが転がってきた。冷静にファーストタッチをして、(相手の)キーパー見ながらシュートを打てました」

 それから1分も経たずして、カシマスタジアムに試合終了の笛の音が響き渡った。鹿島は土壇場で勝ち点1を手に入れた。「このプロ初ゴールが、チームのために取れたゴールになってよかったです。今日は勝ち点1をしっかり取れた」。ただ、「次は勝ち点3を取れるような働きをしたい」と、あくまで勝利を求める。

 荒木はこの日、後半28分に途中出場した。前節の鳥栖戦で後半から投入されてチームの勝利に貢献した切り札は、左サイドを基点に縦横無尽に動き回りながら、ゴールを目指した。「途中から交代で入った僕たちがアグレッシブに動いて、得点して、チームに勝利をもたらすという形が一番理想だった。まず1点を決めて追いついて、そこから逆転も狙っていました」と振り返る。

 ピッチには、同じ攻撃的MFの元スペイン代表、アンドレス・イニエスタも立っていた。「相手チーム(の選手)ではありますが、自分が小さいころからテレビとかで見てきた選手と、こうして一緒にプレーできたのはうれしいこと。実際に生でイニエスタ選手のボールコントロールとかを見て、世界に行くためにはこれだけの技術が必要なんだ」と、世界的スターとの初対戦で新たな刺激を受けたようだ。

 自身を「負けず嫌い」と説明するほど、負けん気は人一倍に強い。チームの勝敗も然ることながら、他の選手との競争に打ち勝つ姿勢を露わにする。今季、ともに鹿島の門を叩いた同期3人へのライバル心は特に強い。この日、荒木よりも先にJリーグ初先発を果たしたGK山田大樹や、4日前のルヴァンカップ清水戦ですでにプロ初ゴールを決めた染野とMF松村優太の活躍は、より一層、荒木をゴールへと向かわせたのかもしれない。

「ルヴァンカップ(清水戦)から(高卒)ルーキーの4人が(試合に)出ていて、自分としては本当に同期には負けたくない。競争意識は強い。その中で今日のようなゴールという結果を出せました。今後もどんどん結果を残して、チームに絡んでいけたらいいです」

 仲間と切磋琢磨し、常に勝利を求める18歳の進化は止まらない。この日、Jリーグ初ゴールという一つの結果を得たことで、その成長スピードをますます加速させていくことだろう。

現地取材◎サッカーマガジン編集部 写真◎J.LEAGUE


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