上写真=スタンドのファン・サポーターに手を振る室屋成(写真◎Getty Images)
■2020年8月15日 J1リーグ第10節(@味スタ/観衆4,435人)
FC東京 1ー0 名古屋
得点:(F)レアンドロ
若い選手の台頭で偉大なチームであり続ける
自身のラストマッチで、勝利に貢献した。先制点にして、決勝点となったレアンドロのゴール。相手のボールを奪うきっかけは、室屋のプレスだった。
33分、左から攻める自軍の攻撃に合わせてポジションをやや内側に取ると、一度相手に渡ったボールがガブリエル・シャビエルに届く。そこへ素早く寄せて、ボールをつつくと、安部柊斗がこぼれ球に反応してレアンドロへ。もう一度、安部が受けて、髙萩洋次郎、永井謙佑、再びレアンドロへとつながり、相手DF陣の間を抜くようなシュートが決まってゴールが生まれた。
本人は「あまり覚えていない」と振り返ったが、中に絞ってスペースをケアし、相手のボールに素早く寄せて、しっかりつついたことでマイボールとなり、結果的に決勝ゴールが生まれている。
「欲を言えば攻撃でもっとチャンスを作れれば良かったですけど、相手がボールを保持するのがうまいチームなので、サイドバックの役割としてはサイドを破られないことと、アップダウンを意識していた。球際の強さとかは見せられたとは思います」
試合前日の移籍発表後の会見では「勝って向こう(ドイツ)に行きたい」と話していたが、有言実行してみせた。
試合後のセレモニーでは、ピッチからサポーターに向けて自身の思いをしっかり口にした。
「FC東京サポーターのみなさん、こんばんは。ドイツのハノファーに移籍することになりました。まずは、シーズン途中で移籍してしまうこと、そしてみなさんに、タイトルをプレゼントできなかったことが、すごく残念です。
ただそれでも実際にオファーが届いたときに自分の夢だったり、自分がまだしたことのない経験をしたいという強い思いがあり、オファーを断ることができませんでした。
ただ、もう一つ移籍を決断した理由に、若い選手の台頭というものがあります。そういった選手たちがFC東京に出続ける限り、このチームは偉大なチームであり続けると思いますし、いつかそういった選手たちが、このチームにタイトルをもたらしてくれると自分も信じています。
勝利してサポーターとともに喜んで、負けたときも最後は必ず、FC東京コールで自分たちの背中を後押ししてくれたサポーターの愛情を僕は一生忘れることはありません。そして最後に、ここまで成長させてくれた長谷川健太監督、社長、FC東京に関わるすべての方々に本当に感謝しています。
本当に、ありがとうございました」
決意と感謝と。紡いだのは室屋らしい、まっすぐな言葉だった。
サポーターへの挨拶を終えたあとに行なわれた会見でも「背番号2のユニフォームを掲げてくれている人やフラッグに言葉を書いてくれている人もいたり、このチームに来て良かったなと思いました。声を出せないのは少しさみしかったですけど、思いは伝わりました」とあらためて感謝を示した。
試合終了から数時間後には飛行機に乗り込み、室屋はドイツへと旅立った。移籍先のハノーファーでも自身が信条とする「気持ちで魅了するプレー」や「チームのために戦う姿勢」を続けていくと誓う。ユニフォームの色は青赤から赤へ、舞台は味の素スタジアムからAWDアレーナに変わるが、その信じるところは変わらない。そうだとすればきっと、室屋は気持ちのこもったプレーで、ドイツのサポーターも魅了するに違いないーー。