上写真=尊い一体感が生まれる川崎F。鬼木監督は「メンタル的に良い状態」(写真◎Getty Images)
狙ってきていることは、分かる
暑い。川崎フロンターレの鬼木達監督も正直に「分かってはいたスケジュールですけど、それでもすごく疲労感があると思います」と認めている。
ただ、他のチームと大きく違うのが「(リーグ戦で)勝っていることとか、苦しいけれど(JリーグYBCルヴァンカップで)予選突破したこととか、ポジティブな要素があるのでメンタル的にはいい状態です」ということ。リーグ戦では8連勝中。8月12日のルヴァンカップ、名古屋グランパス戦は2-2の引き分けだったものの、「正直な気持ちは勝ちたかったので、勝負の意味では残念に思うところがありますが、予選突破が第一の目標なので、立ち上がりの悪い状況からドローに持っていて次のステージへ進むことができた選手の頑張りは評価したいと思います」と結果は残した。
人もうらやむ絶好調ぶりに、果たしてどこが最初に土をつけるのかが話題になっている。そろそろ対戦相手が極端なフロンターレシフトを敷いてきてもおかしくない。いや、すでにどのチームも対策は講じているはずなのだ。
「試合中に、ああ、こういうところを狙ってきてるなというのは分かりますし、自分たちもそれを把握している中でやっています。そこはしっかり修正するというところと、もう一つはそういう状況だからこそ成長できるなとポジティブにとらえているんです」
相手の秘策がポジティブ、というその意味は…?
「相手のあの手この手というのを、どうやって感じて、食い止めて、こちらのストロングを出していくか。それを繰り返すことで、勝ちながら成長できればいいなと改めて思っています」
自分たちのサッカーを組み立てていく基本の部分はもちろんとっくにクリアしていて、相手が差し向けてくる強大なパワーをも取り込んでさらに大きくなっていく。この夏の川崎Fはそういうステージに立っているようだ。
ルヴァンカップの名古屋戦でも前半途中からセンターフォワードの小林悠と右ウイングの宮代大聖のポジションを入れ替えるなど、試合中に柔軟に微調整している。
「こちらとしても、相手の狙いを分かっているのであれば潰していかなければいけませんから、しっかりと対応しなければなりません。もちろん、頭で理解してはいてもなかなかそれを表現するのは難しいですが、(名古屋戦でも)結果に結びつけてくれました。選手たちがフレッシュな頭で挑んでくれているのはありがたいです」
ところで、そのポジション変更については、実は葛藤があったのだという。
「飲水タイムよりも前に少し変化をつけていたんですけど、本当はもっと序盤の序盤に(名古屋の狙いを)分かっていながらも、自分たちの形を推し進めたいという葛藤もあって、時間が経過してしまいました」
その葛藤は、自分たちの形を推し進めることだけにしか興味のない思考回路の持ち主だったら生まれてこないもの。タイミングを見極めながら、“型を変える”ことができるこの余裕…好調の罠にはまだしばらくはまりそうにない。