上写真=3点目を決めた趙東建を中心に喜びの輪。鳥栖がうれしい初白星(写真◎J.LEAGUE)
■2020年8月1日 J1リーグ第8節(@味スタ:観衆4,760人)
FC東京 2-3 鳥栖
得点:(東)レアンドロ、原大智
(鳥)石井快征、森下龍矢、趙 東建
「情けないです、でも…」
白のユニフォームが抱き合って、叫んだ。サガン鳥栖が8試合目にしてようやく初勝利だ。
前半はパワーショットの競演だった。アウェーの鳥栖が30分、ゴール前中央で石井快征がこぼれ球を力強く蹴り込む2試合連続弾で先制すれば、FC東京は39分にレアンドロがFKを直接ねじ込んで同点に。4分後には森下龍矢が左足で目の醒めるような左足のシュートをペナルティー・エリアの外から突き刺して、鳥栖が2-1と再びリードを奪った。どれも力のこもったショットで打ち合った。
スコアが動いたとはいえ、内容は堅め。鳥栖は4-4-2の配置でブロックを丁寧に組み上げ、ある程度引き込みつつ最終ラインも上げる作戦でコンパクトに保ってパスの出しどころをつぶした一方、攻撃ではミスでボールを失う回数も多かった。FC東京としては守備への厳しさが足りなかったこと、10分に完全に崩してからのディエゴ・オリヴェイラのシュートが右ポストに弾かれ、こぼれ球をそのまま打ったレアンドロのシュートが外れたシーンで決めておけなかったことが悔やまれた。
今季未勝利の鳥栖はリードして折り返したのも初めて。後半もタイトなブロックは崩さないまま時間を進めると、セットプレーで好機が巡ってくる。56分に右CKを中央マイナスに送るサインプレーから松岡大起がミドルシュート、DFに当たって跳ね上がったボールを趙東建が左足ボレーで蹴り込んで3-1として、さらに勝利に近づいた。
こうなると、FC東京がなりふり構わずにゴールに迫っていく展開に。しかし、前半からなかなか上がってこないテンポは変わらず、迫力不足は否めないまま。内田宅哉、アダイウトン、原大智、アルトゥール・シルバとフレッシュな交代選手を投入するが、なだれるように押し込んだのは最終盤になってから。86分に右からの室屋成のクロスをニアでアルトゥール・シルバがヘッドで叩き、GKがクリアしたボールがそのまま跳ね上がった落ち際に原大智がGKの前で体をねじ込むようにして頭で触ってゴール。さらにたたみかけたが、わずかに届かなかった。
ついに初勝利を挙げた金明輝監督は試合後、興奮冷めやらぬ様子で選手をたたえた。「アウェーでしっかり選手たちがハードワークしてくれてやりたいことを表現できた」。一方でFC東京の長谷川健太監督は開口一番「情けないです」と切り出したあとに、前夜に鳥栖の選手が発熱したという情報があり、新型コロナウイルスへの感染の可能性を完全に排除できない中では、試合を延期すべきではないかと提案したものの、開催されることになったという事実を公表。「そのことは言い訳にはならないが」と前置きして、「前半、ファイトできなかったのは心理的な要因があったかもしれない」としつつ、「2失点目のように中盤にスペースを与えてしまえば勝てない」と今季2敗目を悔やんだ。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE