上写真=復帰後も4ゴールと量産中の小林。さすがだ(写真◎Getty Images)
「優勝した年を思い出すように」
アスリートであれば、年齢と体力の最高のバランスを見つけようと必死になるだろう。一般論で言えば、体力があり余って怖いもの知らずのころには知見が足りず、経験を重ねて視野が広がるころには体力の低下を憂うことになる。
9月に33歳になる小林悠の場合は、どうだろうか。
「ベテランと言われる歳になったけれど、自分がそう感じているかと言えばそうではないんですよね。まだまだうまくなりたくて、どうやったらゴールが生まれるのかはいつも考えています。頭の中がクリアになってきているので、年齢を重ねてきたほうが点を取れるかもな、と。自分というものがいらない部分をなくしていける判断ができるようになってきて、よりFWの能力、ゴールを決めるための判断材料が増えてきていると思うんです。それを自分で選択できています。向上心を持って取り組めているのは大きいと思いますね」
なかなか含蓄のある言葉だ。情報を整理して無駄を見つけて排除していって、残ったものの中から有益な情報を選び出す。それを実行に移せるだけの肉体の喜びもある。そして、すでに確立した自己にこれから確立する自己を積み重ねていける実感があるようだ。
「点の取り方というか、パターンがある程度固まってきていますし、でもそこにプラスして新しい取り方を見つけています。成長に終わりはないと思いますし、まだまだ成長できるのかなと思っています」
今年も6月に右膝を負傷して、15日に手術を受けている。そこから3〜4週間で復帰の見込みとされたとおりに、7月18日のJ1第5節の横浜FC戦で復帰していきなり出場30分で2ゴール、続く第6節のベガルタ仙台戦では後半から登場して2点のビハインドを自らの2ゴールなどでひっくり返す逆転勝利の立役者になった。やっぱりすごいのだ。
それは、「フロンターレ2020バージョン」の恩恵でもあるという。今季はフォーメーションを4-3-3に進化させて戦っていて、好感触を得ている。
「フォーメーションが変わったのも大きいですね。ボールを奪ったあとにいい位置にいられるのがこのフォーメーションの特徴なんです。あとは、サイドからの攻撃が増えているなとは思いますね。だから、自分の(ゴール前への)入り方次第でゴールを決められるので、フリーになることが大事だし、その場面に顔を出すことを意識していきたいと思います」
そんなチームの状況は、もちろん充実。「誰が出ても結果を残してやろう、スタメンで出てやろう、と思う選手ばかりなので、結果に直結していると思います。全員でいい練習ができていて、優勝した年を思い出すように競争のあるいいチームになっています」と頂点に立つ予感も覚えている。
予感を現実にするためには、これから始まる真夏の9連戦でゴールという結果が必要になる。「夏に強い」のイメージがあるだけに、一気に量産といきたいところだ。
「夏に点が取れる、というのはいつの頃からか分からないけど、周りの皆さんにそういう雰囲気を作ってもらったり、そんな記事も書いていただいて、自分でもそう思い込んでるところがあるんです。やっぱり夏はきついんですけど、皆さんのおかげでそう思えているので、それに乗っているんですよね」
そう言って笑わせるが、気力も体力も知力も充実しているいま、私たちは「小林悠史上最高の怖いもの知らず」を見ているのかもしれない。